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2015年12月24日 (木)

子の老親に対する扶養料、扶養権利者の必要とする自己の平均的生活を維持するために必要である最低生活費から同人の収入を差し引いた額を超えず、かつ、扶養義務者の扶養余力の範囲内の額とするのが相当とした事例

札幌高裁H26.7.2    

子の老親に対する扶養料、扶養権利者の必要とする自己の平均的生活を維持するために必要である最低生活費から同人の収入を差し引いた額を超えず、かつ、扶養義務者の扶養余力の範囲内の額とするのが相当とした事例
 
<事案>
母である抗告人が、子である非抗告人に対し、扶養料の支払を求める審判。 

抗告人:生活費(月額)は27万6700円が必要であると主張して、生活費から国民年金及び厚生年金の支給合計額7万6825円を差し引いた19万9975円を支払うよう求める。

被抗告人:抗告人の生活費(月額)は16万1700円が妥当⇒扶養料は月額8万4975円とすべき
 
<規定>
民法 第879条(扶養の程度又は方法)
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
 
<原審>
抗告人の生活費:月額16万5700円
扶養料:月額9万円 
 
<判断>
扶養料の額は、
①抗告人の必要とする自己の平均的生活を維持するために必要な最低生活費から抗告人の収入を差し引いた額を越えず、
②被抗告人の扶養余力の範囲内の金額とするのが 相当。

総務省統計局の家計調査報告をもとに抗告人の最低生活費を算出。

原審判を変更して、扶養料を月額11万円を定めた。
 
<解説>
●高齢になった親に対する扶養義務の性質 
民法の扶養:
①共同生活を営む夫婦間及び未成熟子に対する親の義務(生活保持義務)
②民法877条定める、直系血族、兄弟姉妹さらには三親等までの親族間の相互の扶養義務であって、扶養者において、自己の社会的地位にふさわしい生活を犠牲にするこtなく扶養する余力ある場合に扶養すれば足りる義務(生活扶助義務)

高齢になった親の扶養義務は②生活扶助義務

①一体として生活する運命共同体の関係にある夫婦及びその未成熟子の扶養と、互いに独立している成人の親子の間の扶養とは質的に差があり、
②高齢になった親の扶養は年金制度や介護保険制度等の社会保険制度がある点でも違いがある

●扶養料の算方法 
婚姻費用や養育費といった生活保持義務についての選定基準・・標準的算定方式。

一般に親族扶養における生活費は、
①原則として扶養権利者の生活保護基準における最低生活費を算出し、
扶養義務者が、その社会的地位にふさわしい生活をしてなお余力があるときに、その余力の限度で扶養義務を負い、
同順位の扶養義務者がいる場合には、その余力の割合に応じて負担を定める

算出した結果については、権利者及び義務者の職業や社会的地位、当事者間の過去の生活交渉、感情関係、権利者が扶養を必要とするに至った原因、責任なども検討し、妥当性を吟味する。

審判例:
①生活扶助義務の扶養権利者の最低生活費を労研方式(財団法人労働科学研究所が行った生活実態調査に基づいて算定した最低生活費を生活水準算定の尺度とし、そのとき用いられた総合消費単位を用いて生活費の配分をする算定方式)により定めたもの。
②扶養権利者の生活費としては、生活保護基準額を参考にするのが相当であるとするもの。
生活保護による生活扶助及び住宅扶助等の金額並びに医療費から最低生活費を算出するもの。

●本決定は、
被抗告人の扶養義務を生活扶助義務と位置づけ

扶養料については、生活保護基準や標準生活費を参考にして必要な生活費を算出
抗告人(扶養権利者)の最低生活費を算出するに当たり、総務省統計局の家計調査報告に基づいて消費支出を、実額に基づいて消費支出に含まれない公租公課や医療・保険料をそれぞれ算出して最低生活費を算出(この方法により算出した最低再活費は、生活保護の基準を超えていると推認される。)。

最低生活費から抗告人の年金収入を差し引いた額を扶養料の上限とし、被抗告人の扶養余力の範囲内の金額であるかを検討した上で、扶養料を決定。

判例時報2272

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