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2015年12月31日 (木)

別件で刑事施設に収容されている再審請求人の届出住居に宛てて行った同人に対する再審請求棄却決定謄本の付郵便送達が有効とされた事例

最高裁H27.3.24      

別件で刑事施設に収容されている再審請求人の届出住居に宛てて行った同人に対する再審請求棄却決定謄本の付郵便送達が有効とされた事例 
 
<事案>
有罪の言渡しを受けた者による再審請求に関する申立人からの特別抗告の事案。 
再審請求の棄却決定謄本を届出住居に宛てて特別送達⇒付郵便送達。

送達当時、申立人は別件で勾留されており、2年以上経ってから再審請求が棄却されたことを知った。
⇒本件付郵便送達は無効であるなどとして、即時抗告を経て特別抗告へ。
 
<規定>
刑訴規則 第62条(送達のための届出・法第五十四条)
被告人、代理人、弁護人又は補佐人は、書類の送達を受けるため、書面でその住居又は事務所を裁判所に届け出なければならない。裁判所の所在地に住居又は事務所を有しないときは、その所在地に住居又は事務所を有する者を送達受取人に選任し、その者と連署した書面でこれを届け出なければならない。
2 前項の規定による届出は、同一の地に在る各審級の裁判所に対してその効力を有する。
3 前二項の規定は、刑事施設に収容されている者には、これを適用しない。
4 送達については、送達受取人は、これを本人とみなし、その住居又は事務所は、これを本人の住居とみなす。

刑訴規則 第63条(書留郵便等に付する送達・法第五十四条)
住居、事務所又は送達受取人を届け出なければならない者がその届出をしないときは、裁判所書記官は、書類を書留郵便又は一般信書便事業者若しくは特定信書便事業者の提供する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして別に最高裁判所規則で定めるもの(次項において「書留郵便等」という。)に付して、その送達をすることができる。ただし、起訴状及び略式命令の謄本の送達については、この限りでない。
2 前項の送達は、書類を書留郵便等に付した時に、これをしたものとみなす。

刑訴法 第54条〔送達〕
書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(公示送達に関する規定を除く。)を準用する。

民訴法 第102条(訴訟無能力者等に対する送達)
訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする。
2 数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達は、その一人にすれば足りる。
3 刑事施設に収容されている者に対する送達は、刑事施設の長にする
 
<問題点>
●付郵便送達の要件に関するもの
刑訴規則63条1項の付郵便送達は、被告人等が同規則62条1項所定の送達のための届出をしていないことを要件としている。
同条3項は、その文言上、刑事施設に収容されている者には同条1項の規定を適用しない。

本件付郵便送達当時、被収容者となっていた本件申立人に前記届出義務違反があるといえるかが問題
 
●被収容者に対して送達する場合の受送達者の問題
刑訴法54条は、送達に関して、原則的に民訴法の規定を準用。
民訴法102条3項が、刑事施設に収容されている者に対する送達は刑事施設の長にするとする

被収容者である申立人本人を受送達者としてその届出住居に宛ててした本件付郵便送達が有効かが問題
 
<判断>
申立人が、自ら再審請求をしたにもかかわらず、住居を届け出た後、本件付郵便送達がなされるまで、裁判所に対して住居変更届出などをしてこなかった一方で、裁判所も、申立人の所在を把握できず、他に申立人が別件で刑事施設に収容されていることを知る端緒もなかったという本件の事実関係

本件付郵便送達は、刑訴規則62条1項の送達場所等の届出を怠ったことを理由に同規則63条1項により申立人本人を受送達者として届出住居に宛てて行ったものと理解することができ、再審請求をしている申立人が実際には別件で刑事施設に収容されていたとしても有効と解するのが相当
 
<解説>
●被収容者の留守宅等に宛ててなされた送達に関する判例:
①刑事上告事件に関し、原審において保釈許可決定を受けながら保釈金未納のためなお勾留中であった被告人に対する上告趣意書最終提出日の告知を、肩書住居宛てに送達して家族が受領した事案について、このような場合の送達は、刑訴法54条により準用される旧民訴法168条(現行民訴法102条3項)の規定による監獄の長(刑事施設の長)に宛ててしなければならない
⇒前期告知は適法にされていなかったことになる⇒期間内の上告趣意書府提出を理由として上告棄却決定に対する異議申立てを認めた(最高裁昭和33.2.4)。

民事事件の送達に関してであるが、被収容者の留守宅に宛ててなされた送達に関するものとして、収容されていた旨の届出の有無に関係なく、被収容者を受送達者としてその留守宅に宛ててなされた送達手続は無効であることを前提とする判断(最高裁昭和51.5.25)。
学説:被収容者の留守宅に宛ててなされた送達は無効であり、現に書類が被収容者の手に渡れば瑕疵が治癒され、その時点で送達の効力が生じる

●本決定の前提 
本決定は、刑訴規則62条3項により「刑事施設に収容されている者」が同条1項の届出義務を免れるのは、その収容の根拠となる事件が係属している受訴裁判所との関係にとどまり別件で収容されていた申立人には届出義務違反があると理解。

本決定は、もっぱら刑訴規則63条1項の付郵便送達の有効性の問題として検討。

受送達者の点に関しては、少なくとも、本件のような事実関係の下で刑訴規則63条1項の付郵便送達の要件が備わるときには、同項は、民訴法102条3項との関係で刑訴法54条にいう特別の定めになるという判断をしているものと理解される。

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