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2015年11月 3日 (火)

干拓地の潮受堤防排水門の開放を命じた確定判決の間接強制としての支払額を1人につき2万円に増額された原決定が維持された事例

福岡高裁決H27.6.10   

干拓地の潮受堤防排水門の開放を命じた確定判決の間接強制として1人につき1人1万円の金銭の支払いを命じたにもかかわらず、その履行がされなかったことにより、間接強制としての支払額を1人につき2万円に増額された原決定が維持された事例
 
<事案>
国に対してその開門を命ずる確定判決が存在するところ、諫早湾及びその近傍において漁業を営むXらが、国に対して、上記間接強制決定の間接強制金の金額を増額変更するよう命ずることを求め(1日1億円、予備的に1人につき1日222万2222円)、その金額を変更した原決定に対する執行抗告事件
国が、原決定を取り消し、間接強制決定の変更の申立てを却下することを求めた。 
 
<規定>
民執法 第172条(間接強制)
作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる
 
<原決定>
国が本件開放義務を履行しておらず、間接強制決定が奏功していない民事執行法172条2項に定める事情の変更があったもので、当初の間接強制金の金額が債務の履行を確保するためにもはや不相当

不履行によってXらが受ける損害、国の不履行の態度、履行の難易等を考慮して、間接強制金の金額を、原決定の送達の日の翌日以降、1人につき1日2万円の割合による金員とした。 
 
<判断> 

①国の主張:関係自治体等の強硬な反対に遭い、上記潮受け堤防の防災機能等を代替する対策工事の実施ができないなど本件開放義務を任意に履行することが事実上不可能となっているから、履行しないことをもって事情の変更というべきではない。
vs.
民執法172条2項が事情jの変更があった場合に同条1項所定の支払予告命令の変更を認めることとした趣旨は、支払予告命令の実効性が発令後にしか判明せず、同命令が効を奏しなかった場合に改めて間接強制の申立てをすることが煩雑であるのみならず、支払予告命令相互の関係も曖昧となることから、既に発した支払予告命令の変更決定という方法で対処することとした。

上記事情の変更には、既に発した支払予告命令の不奏功の場合も含まれる上、本件開放義務は、性質上国の意思のみで履行することができる⇒国の主張は採用できない。
 

②国の主張:間接強制金は、第一次的には不履行によって債権者が受ける損害額を基準として決定すべきであるところ、原決定により変更された間接強制金はXらの損害額を大幅に上回っており、著しく不当。
間接強制金を増額することは全体的な紛争の解決を求めた上記最高裁決定に反する。 
vs.
民執法172条1項所定の間接強制の額は、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額であって、執行債権の性質、不履行により債権者が受けるべき不利益、債務者の資力、従前の履行の態様及び債務の性質に照らして、債務名義上の執行債権を実現させるため、執行裁判所が合理的裁量により決するもの。⇒単に不履行によって債権者が受ける損害額のみによって決せられるものではない

上記間接強制決定が1人につき1日1万円の間接強制金の支払を命じたにもかかわらず、国が本件開放義務を履行しないことに照らせば、間接強制金は1日2万円とするのが相当であって、履行を確保するために過大とはいえない
 
<解説>
債務の履行を確保するために債務者に一定額の金銭の支払を命じた後に事情の変更があったときは、執行裁判所は申立てにより間接強制決定を変更することができる。(民執法172条2項) 

ここでいう事情の変更は、支払予告命令発令後に発生、または発令前に発生していたが発令後に判明した事情の変更で、支払予告金額又は支払期間等を変更すべき場合を指す。

支払予告命令の不奏功という事情も、支払予告命令発令後に発生した事情の変更と認められる。

変更の内容について法は特別の制限をしておらず、相当と認める額を定めることとなる(民執法172条1項)。

その金銭は、債務者の不履行の時は債権者に対して支払われ、その限度で損害額に充当される⇒法定の違約金の性質を有するとされ、一応損害賠償の額が斟酌されるものの、債務の目的や性質その他の事情を考慮して決する。

判例時報2265

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