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2015年10月21日 (水)

同僚職員に対するセクシャルハラスメントなどを理由とする、地方公務員法29条1項等による懲戒免職処分および退職手当支給制限処分に裁量権の逸脱は認められないとされた事例

福岡高裁宮崎支H26.12.24    

同僚職員に対するセクシャルハラスメントなどを理由とする、地方公務員法29条1項等による懲戒免職処分および退職手当支給制限処分に裁量権の逸脱は認められないとされた事例 
 
<事案>
Y市長が同市の職員であったXに対して懲戒免職処分及び退職手当支給制限処分
⇒Xが、これらの処分は事実誤認に基づくものであって裁量権を逸脱⇒右懲戒免職処分及び退職手当支給制限処分の取消しを認めた。 
 
<原審>
最高裁昭和52.12.20を引用し、本件懲戒免職処分が「社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱するものとはいえない」⇒Xの請求を棄却。
本件退職手当支給制限処分についても「本件懲戒免職処分の理由に照らせば」相当⇒請求を棄却。 
 
<判断>
昭和52年最判を引用し
公務員につき懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは懲戒権者の裁量に任されており、懲戒権者が上記の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いてい裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法にならないと解すべき

裁判所が上記処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき。
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本件は、社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱するものということはできない

本件退職手当支給制限処分について
「退職手当等の全部又は一部の支給制限処分を行うかどうか、行う場合に支給制限額をいくらにするかの判断は、任命権者などの裁量にゆだねられる。
⇒裁量権の逸脱はなし。」
 
<解説>
行政庁の裁量権行使に対する司法審査の方法:
A:実体的審査
B:判断過程審査および手続的審査

昭和52年最高裁:
実体的審査のうち、踰越濫用型審査の採用を明言。
懲戒権者の裁量権の行使について、
社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである」

「社会観念」が裁量権に対する統制の基準とされたが、審査密度が希薄となり、踰越濫用の領域を狭めて行政庁の裁量権行使への許容度を拡大し、実質的に処分の(違法性ではなく)適法性を導くための方法となる旨の指摘。
 
最高裁H24.1.16:
昭和52年最判に依拠しつつも、停職又は減給処分を選択するには「規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべき」

司法統制の強化につながるとの評価
 
本件においては、Xの行為に関してY市職員が調査報告書をまとめており、原判決および本判決における事実認定の多くはこの調査報告書に依拠する。

本件の場合は、実質的に、Y市が行った調査の過程や手続に瑕疵があったと認められない限り、処分の違法性は認定されないものと考えられる。

判例時報2266

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