県立高校の野球部所属の生徒が練習中に熱中症に罹患して死亡した事故について、野球部監督教諭に過失があったとして、県の国家賠償責任が認められた事例
高松高裁H27.5.29
県立高校の野球部所属の生徒が練習中に熱中症に罹患して死亡した事故について、野球部監督教諭に過失があったとして、県の国家賠償責任が認められた事例
<事案>
練習中熱中症で死亡
Aの両親であるX1とX2が、本件高等学校の保健体育科教諭であり、硬式野球部の監督であったBに、部員に対する安全配慮義務を怠った過失があり、これによりAが死亡したと主張し、本件高等学校の設置者であるY県に対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案。
<原審>
Aが倒れた直後にBが119番通報したこと等⇒過失があったとはいえない⇒Xらの本訴請求を棄却。
<判断>
①Bは、Aに100mダッシュを再開させた以上、熱中症を念頭に置いてAの状況を注視し、Aに異常があれば即座にAのダッシュを中止させ、給水、塩分摂取と休憩を命じ、必要に応じて、熱中症に対する応急措置や病院への搬送措置を講ずべき注意義務を負っていた
②100mダッシュを再開した後間もない段階でAの走る様子は変であり・・・BがAの状況を注視していれば、同様の状況を認識することができた⇒Bは、この時点で、Aに対し、ダッシュを中止させる注意義務を負っていたにもかかわらず、これを怠り、Aのダッシュを続行させた点に過失がある
③Aが倒れ込んだときに、BはAが熱中症であると判断した上で、Aの身体を冷やすなどの応急処置を速やかに取るべき注意義務を負っていたが、Bはこれを怠った
⇒Yの損害賠償責任を肯定。
<解説>
課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、学校側に生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき注意義務がある(最高裁昭和58.2.18)。
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