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2015年9月 3日 (木)

音楽著作権の管理事業者が放送への利用の許諾につき使用料の徴収方法を定めるなどの行為が、独禁法2条5項にいう「排除」の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有するとされた事例

最高裁H27.4.28   

音楽著作権の管理事業者が放送への利用の許諾につき使用料の徴収方法を定めるなどの行為が、独禁法2条5項にいう「排除」の要件である他の事業者の参入を著しく困難にする効果を有するとされた事例 
 
<事案>
著作者や音楽著作権を有する音楽出版社等から委託を受けて音楽著作物の利用許諾等の音楽著作権の管理を行う管理業者である上告参加人(A)が、その管理する音楽著作物の放送への利用の許諾につき、使用料の徴収方法を定めて放送事業者との利用許諾契約を締結しこれに基づくその徴収をする行為について、当該行為が他の管理事業者の事業活動を排除するものとして、独禁法2条5項の所定のいわゆる排除型私的独占に該当し同法3条に違反することを理由として排除措置命令
⇒これを不服とする審判の請求を経て、上告人(公正取引委員会)により、Aの当該行為は同項所定の排除型私的独占に該当しないとして上記命令を取消す旨の審決
⇒他の管理事業者である被上告人(X)が、上記審決の取消し等を求めた。 

放送事業者によるテレビやラジオの放送では膨大な数の楽曲が日常的に利用⇒放送事業者とAとの間では、Aの管理楽曲の全てについてその利用を包括的に許諾する利用許諾契約書を締結

Aの定める使用料規程(著作権等管理事業法13条参照)においては、放送使用料の徴収方法につき、
①年度ごとの放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額又は又は所定の金額による徴収(「本件包括徴収」)
②1曲1回ごとの単位使用料を6万4000円とし、これに管理楽曲の利用数を乗じて得られる金額による徴収(「個別徴収」)

ほとんど全ての放送事業者は、Aとの間で本件包括徴収による利用許諾契約を締結

<規定>
独禁法 第2条〔定義〕
⑤この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
 
<命令・審決>
公正取引委員会:Aがほとんど全ての放送事業者との間で本件包括徴収にる利用許諾契約を締結しこれに基づく放送使用料の徴収をする行為は(「本件行為」)につき、本件市場における他の管理事業者の事業活動を排除するもの⇒平成21年2月27日、Aに対し、排除措置命令
⇒審判請求

公正取引委員会:平成24年6月12日、Aの本件行為につき、本件市場における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有するものではなく、独禁法2条5項所定の排除型私的独占に該当するとはいえない⇒本件排除措置命令を取り消す旨の審決。 

<原審>
Aの本件行為は、排除効果を有する⇒本件審決の上記判断は誤り⇒本件審決を取り消し。
 
<判断>
公正取引委員会の上告受理の申立てを受理し、本件行為が排除効果を有するものであるとした原審の判断は是認し得る⇒上告を棄却。
行政事件訴訟法22条1項に基づく参加人であるAも、原判決に対する上告及び上告受理の申立て

上告事件については上告棄却決定により、上告受理申立て事件については二重上告受理申立てであることを理由とする上告不受理決定により、それぞれ終結。

尚、Aについても公正取引委員会の上告受理申立てによる移審の効果が及んでいる(行政事件訴訟法22条4項、民訴法40条1項参照)ことから、Aが提出した上告受理申立て理由書については、公正取引委員会の申立てに係る上告受理申立て事件における期限内の理由の追加として取り扱われている。)
 
<解説>
事業者の行為が独禁法2条5項所定の排除型私的独占の要件である「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するか否かについて
①自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり、
他の事業者の市場への参入を著しく困難にするなどの効果(排除効果)を有するものといえるか否かによって決すべきもの(最高裁H22.12.17)。

本判決は、②の要件(排除効果)の該当性について、本件の事案に即した諸要素(本件市場を含む音楽著作権管理事業に係る市場の状況、A及び他の管理事業者の上記市場における地位及び競争条件の差異、放送利用における音楽著作物の特性、本件行為の態様や継続期間等)を総合的に考慮して判断すべきものとした上で、これらの諸要素に係る諸般の事情を考慮すると本件行為は排除効果を有するとした。

Aの本件行為は、本件市場において、音楽著作権管理事業の自由化後も大部分の音楽著作権につき管理委託を受けているAとの間で包括許諾による利用許諾契約を締結しないことが放送事業者にとっておよそ想定し難い状況の下で、その管理楽曲に係る放送使用料の金額の算定に放送利用割合が反映されない徴収方法を採ることにより、放送事業者が他の管理事業者に放送使用料を支払うとその負担すべき放送使用料の総額が増加するため、楽曲の放送利用における基本的に代替的な性格もあいまって、放送事業者による他の管理事業者の管理楽曲の利用を抑制するものであり、その抑制の範囲がほとんど全ての放送事業者に及び、その継続期間も相当の長期間にわたるものであることなどに照らせば、他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にする効果(排除効果)を有するものというべきである、と判断。

本判決は、「なお書き」において、独禁法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するためのもう1つの要件である人為性の有無に関し、Aの本件行為は別異に解すべき特段の事情のない限り人為性を有するものとしている。

①人為性が排除効果と密接な関係を持つ要件であり、排除行為の典型とされる行為(例えば、公正取引委員会の定めるガイドライン「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」にいう抱き合わせ、供給拒絶・差別的取扱い、排他的取引等)については排除効果と人為性とが一体的に判断される場合も少なくないこと。
②本件行為に係る人為性の有無についても、その判断の基礎となる事情は本判決に示された事実関係等において既に顕れており、取消し後の審判における更なる審理を経ずに法的判断を示すことが可能であったこと。

本判決は、以上のような人為性の有無に関する判断を踏まえて、取消し後の審判につき、人為性の有無につき別異に解すべき特段の事情の有無を検討の上、本件行為が独禁法2条5項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当するか否かなど、同項の他の要件の該当性が審理されることとなるものとする。

判例時報2261

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