道路交通法違反保護事件により保護観察決定を受けた少年について、身代わり犯人であったことが判明したため、当該決定を取り消すとともに、同事件につき不処分とした事例
千葉家裁H26.6.30
道路交通法違反保護事件により保護観察決定を受けた少年について、身代わり犯人であったことが判明したため、当該決定を取り消すとともに、同事件につき不処分とした事例
<事案>
家庭裁判所で道路交通法違反(法的速度制限違反)保護事件につき、保護観察(交通短期保護観察)に付する旨の決定を受けた少年について、保護観察係属中に、少年が実兄の身代わりになって警察に出頭したことが判明
⇒
裁判所は、職権により道交法違反の事実について保護処分取消事件を立件した上、少年法27条の2第1項により、上記の保護観察決定を取り消した事案。
少年については、これとは別に犯人隠匿罪につき事件送致がなされ、同事件については、保護的措置として不処分決定。
<規定>
少年法 第27条の2(保護処分の取消し)
保護処分の継続中、本人に対し審判権がなかつたこと、又は十四歳に満たない少年について、都道府県知事若しくは児童相談所長から送致の手続がなかつたにもかかわらず、保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁判所は、決定をもつて、その保護処分を取り消さなければならない。
2 保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、前項と同様とする。ただし、本人が死亡した場合は、この限りでない。
<解説>
●「本人に対し審判権がなかったこと・・・を認め得る彰館資料を発見したとき」の解釈として、「保護処分決定が確定したのに保護処分の基礎とされた非行事実の不存在が明らかにされた場合にも何らかの救済の途が開かれていなくてはならない」⇒非行事実がなかったことを認める明らかな証拠を発見した場合を含む(最高裁昭和58.9.5)。
●保護処分取消決定の法的性質
A:将来に向かって保護処分から解放する手続⇒保護処分終了後の取消は認められていなかった(最高裁昭和59.9.18)。
⇒保護処分取消決定があっても、原事件の保護処分決定自体には影響がない⇒取消裁判所は原事件につき何らかの判断を示す必要はない。
平成12年改正により法27条の2に2項が新設
保護処分終了後に、審判事由の不存在を認めうる明らかな資料が存在することが保護処分取消事由とされた。
~
既に保護処分自体は終了⇒取消の対象は保護処分の執行ではなく、原事件の保護処分決定自体。
A:1項による取消の場合は、従来どおり、取消の対象は保護処分の執行⇒1項と2項は取消対象の転で性質を異にする。
B:平成12年改正以後、審判事由の不存在を理由とする保護処分の取消については、1項による取消と2項による取消を統一的に考えて、保護処分決定自体が取消の対象とみるとする見解。
本決定は、1項による保護処分継続中の取消の場合に、原事件に関する判断を示している⇒Bの立場。
その上で、取消裁判所において原事件について終局決定をすべきものとする立場か、少なくとも、終局決定をすることが可能であるという立場に立つ。
判例時報2258
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