市庁舎の一部を労働組合等の組合事務所として利用するための目的外使用許可申請を不許可とした処分が取り消されるとともに、目的外使用許可処分の義務付けと国賠請求が認められた事例
大阪地裁H26.9.10
市庁舎の一部を労働組合等の組合事務所として利用するための目的外使用許可申請を不許可とした処分が取り消されるとともに、目的外使用許可処分の義務付けと国賠請求が認められた事例
<事案>
市長は、原告らに対し、本件スペースの目的外使用を許可しない方針を表明し、原告らに対し、本件スペースからの退去を求め、平成24年度の目的外使用を不許可とし、団体交渉の申入れにも応じなかった。
市長は、労働組合等に対する便宜供与を行わないとのルールを条例化するとし、「労働組合等の組合活動に対する便宜の供与は、行わないものとする」という文言による条例案が、同年8月1日までに被告の市議会で可決され、施行された(「本件条例12条」)。
市長は、原告らの平成25年度及び平成26年度に係る目的外使用許可申請に対し、本件条例12条及び市庁舎における余剰スペースの不存在を理由に不許可処分を行った。
原告らは、本件各不許可処分につき、順次訴訟を提起してその取消しを求めるとともに(平成24年度及び平成25年度各不許可処分は、審理中にその使用に係る機関が経過したため、取消しの訴えが取り下げられた。)、平成26年度に係る使用許可処分の義務付けを求め、また、国家賠償法1条に基づき、有形無形の損害の賠償を求めた。
被告は、原告らが明渡しに応じなかったことから、同原告らに対し、所有権に基づき本件スペースの明渡しを求めた。
<争点>
本件各不許可処分における、市長の裁量権の逸脱・濫用。
<解説>
判決は、判断の枠組みとして、公立学校施設の目的外使用の許否の判断と管理者の裁量権及び当該判断の適否に関する司法審査の方法についての最高裁H18.2.7を参照し、また、使用者である地方公共団体が労働組合等にその管理する施設の使用を許可する義務を負うものではないという前提に立っている点でも、最高裁の判断を前提。
従前の継続的使用許可の事実から直ちにこれと異なる取扱いをすることが違法となるものではないが、同事実からは、従前の組合事務所としての使用が当該施設の用途・目的を妨げるものではないことが推認される。
不許可処分における裁量権の逸脱・濫用の有無の判断:
施設管理者側の庁舎使用の必要性の増大の程度、団結権等に及ぼす影響の有無・程度、施設管理者側の団結権侵害等の意図の有無等の事情を総合考慮して判断すべき。
本件各不許可処分に至る経緯⇒
被告がその理由として挙げていた行政事務スペース不足という事情は、本件スペース不足の明渡しを求めざるを得ない程度の庁舎使用の必要性を基礎付けるものとは認められず、また、庁舎内で労働組合員等による政治活動が行われるおそれについても、組合事務所の存在との高い関連性を認めることはできない。
市長において、職員の団結権等を侵害する意図があったものとみざるを得ない。
⇒前記判断枠組みに照らして、裁量権の逸脱・濫用があった。
本件条例12条:
その制定経過等に照らし、上記の市長の職員の団結権等に対する侵害の意図に基づく指示を制度化したもの。
少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる被告の行為を適法化するために適用される限りにおいて、職員の団結権等を違法に侵害するものとして、憲法28条又は労組法7条に違反して無効であると判断。
判例時報2261
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