裁判員裁判において死刑の選択が問題となる事案の量刑評議のあり方等
最高裁H27.2.3
①②
裁判員裁判において死刑の選択が問題となる事案の量刑評議のあり方等
<事案>
裁判員制度の施行後5年:
第1審死刑(21件)⇒控訴で破棄(3件)⇒検察官上告(2件①②)⇒最高裁が棄却
①事件:
殺人等による懲役20年の服役前科を有してた被告人が、出所半年後、強盗目的でマンションに侵入し、殺害。
②事件:
住居侵入・強盗殺人⇒再度親友し、死体周辺に火を放ち、死体と居室を焼損。
+その前後約2か月の女性5人に対する、強盗致傷、強盗強姦等。
<①事件>
第1審:死刑
原審;
①被害者が1名で、侵入時に殺意があったとは確定できず、当初から殺害の決意を持っていたなどとはいえない。
②被告人の前科は無期懲役に準ずる有期懲役であり、前科の内容は本件強盗殺人とは社会的にみて類似性が認められないなど前科の評価に関して留意し酌量すべき点がある。
⇒第1審を破棄し無期懲役の自判。
判断:
適法な上告理由に当たらない。
職権で、本件犯行とは関連が薄い前記前科があることを過度に重視して死刑に処した裁判員裁判による第一審判決の量刑判断が合理的でなく、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見出し難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定が、甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するということはできない
⇒上告棄却。
<②事件>
第1審:死刑
原審:無期懲役
判断:
適法な上告理由に当たらない。
職権で、被害女性1名の殺害を計画的に実行したとは認められず、殺害態様の悪質性や危険性、被告人の前科、反社会的な性格傾向等を強調して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見出し難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定が、甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。
⇒上告棄却。
<説示>
①②事件のいずれにおいても、刑罰権の行使が国家統治権の作用であり、その中でも死刑が究極の刑罰であるから、死刑の適用は慎重に行われなければならず、裁判の営みに内在する本質的な要請である公平性の確保にも十分意を払わなければならない旨を説示。
評議に当たっては、裁判例の集積から死刑の選択上考慮されるべき要素及び各要素に与えられた重みの程度・根拠を検討しておき、その検討結果を裁判体の共通認識とし、それを出発点として議論することが不可欠であり、また、死刑の適用が慎重に行われなければならないという観点及び公平性の確保の観点を踏まえて議論を深める必要があるとした上、死刑の科刑が是認されるためには、裁判体の判断の具体的、説得的な根拠が示されるべき。
判例時報2256
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