最高裁がした訴訟終了宣言の決定に対する不服申立ての許否
最高裁H27.2.24
最高裁がした訴訟終了宣言の決定に対する不服申立ての許否
<事案>
申立人に対する覚せい剤取締法違反被告事件について、申立人の上告取下げに伴い、最高裁がした訴訟終了宣言の決定に対し、弁護人及び申立人から不服申立てがされた事案。
<判断>
終審である最高裁判所がした訴訟終了宣言の決定に対しては不服申立てをすることが許されないから、本件申立ては不適法である。
<解説>
●
最高裁判所の決定に対しては、特別の規定がない限り、最高裁判所が終審裁判所であるという性格からして、制度上、これに対する不服申立て(異議申立てを含む。)をすることは許されない、というのが基本原則。
この基本原則の例外として、判例上
①上告棄却決定に対する異議申立て(最高裁昭和30.2.23)
②最高裁判所での保釈保証金没収取消決定に対する異議申立て(最高裁昭和52.4.4)のみが認められてきた。
~
条文上の根拠はないものの、合理的理由と法律的必要性のあるとして、例外的に判例により創造された不服申立て。
●訴訟終了宣言の決定に対する不服申立てが許されるか?
訴訟終了宣言の決定自体が、刑訴法上の明文根拠のない実務運用
これに対する不服申立てについても明文の規定はない
最高裁昭和61.6.27:
高等裁判所がした控訴取下げによる訴訟終了宣言の決定に対する即時抗告に代わる異議を認めた。
本判決:最高裁がした訴訟終了宣言の決定に対しては不服申立てをすることが許されない。
←
(1)高等裁判所の「した訴訟終了宣言の決定は、終審である最高裁の判断を経ていないものであるのに対し、最高裁の訴訟終了宣言の決定は、最高裁が、終審裁判所として、上告取下げという訴訟終了原因につき最終的な判断をしたものであって、これに対し更なる不服申立てを認める必要はない。
(2)最高裁のした決定に対する不服申立てを認めた上記2つの判例については、①上告棄却決定に対しても判決訂正申立てに準じて不服申立てを認める必要があること、あるいは②決定に際して告知聴聞、防御の手続が保証されていないため代わりに不服申立てを認める必要があることといった、例外的に不服申立てを認めるべき特段の必要性があるのに対し、最高裁のした訴訟終了宣言の決定については、申立人からの上訴権回避請求を受けて判断をしたもので告知聴聞、防御の機会が保証されており、上記各判例のように更に不服申立てを認めるべき合理的理由及び法律的必要性がない
(3)判例理論により条文根拠のない例外的な不服申立て方法を次々と創造していくことは立法権との関係で慎重であるべき
判例時報2252
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
「判例」カテゴリの記事
- 懲戒免職処分に先行する自宅待機の間の市職員の給料等請求権(肯定)(2023.05.29)
- 懲戒免職された地方公務員の退職手当不支給処分の取消請求(肯定)(2023.05.29)
- 警察の情報提供が国賠法1条1項に反し違法とされた事案(2023.05.28)
- 食道静脈瘤に対するEVLにおいて、鎮静剤であるミダゾラムの投与が問題となった事案 (過失あり)(2023.05.28)
- インプラント手術での過失(肯定事例)(2023.05.16)
「刑事」カテゴリの記事
- 詐欺未遂ほう助保護事件で少年を第一種少年院に送致・収容期間2年の事案(2023.05.07)
- 不正競争防止法2条1項10号の「技術的制限手段の効果を妨げる」の意味(2023.05.01)
- 保釈保証金の全額没収の事案(2023.04.02)
- 管轄移転の請求が訴訟を遅延する目的のみでされた⇒刑訴規則6条による訴訟手続停止の要否(否定)(2023.04.02)
- いわゆる特殊詐欺等の事案で、包括的共謀否定事例(2023.03.23)
コメント