拘置所の職員が被収容者の旧姓及び名前を他の被収容者に漏洩したことは違法であるとして、国の損害賠償責任を認めた事例
名古屋高裁H27.2.5
拘置所の職員が被収容者の旧姓及び名前を他の被収容者に漏洩したことは違法であるとして、国の損害賠償責任を認めた事例
<事案>
連続リンチ殺人事件で死刑判決が確定し、名古屋拘置所に収容中のXが、拘置所長によって書籍の閲覧の権利、知る権利等を侵害されたとして、Y(国)に対し、慰謝料100万円の支払を求め(本件請求①)
また、 拘置所の職員からプライバシー等を侵害されたとして、Yに対し、90万円の慰謝料の支払を求め(本件請求②)た事案。
<一審>
いずれも棄却
<控訴>
Xは、請求②についてのみ控訴
<判断>
拘置所の職員が他の収容者に対し、Xの旧姓及び名前を漏洩したと認定。
右漏洩行為には何らの正当な理由がなく、公益を図る目的に出たものとみることができない
⇒
みだりにこれら情報を第三者に開示されないというXの保護に値する利益を侵害し、Xの名誉を毀損する違法な公権力の行使である
⇒
Yの損害賠償責任を肯認し、30万円の支払を求める限度で、Xの請求を認容。
<解説>
氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し、特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その人の人格の象徴であって人格権の一内容を構成する(最高裁昭和63.2.16)。
人格権には、社会生活を営む上において自己に不利益な事実に関して、みだりに氏名を公開されない人格権も含まれていると解されている。
判例時報2253
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