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2015年6月18日 (木)

相続税につき減額更正がされた後に増額更正がされた場合の延滞税

最高裁H26.12.12   

相続税につき減額更正がされた後に増額更正がされた場合において、右増額更正により新たに納付すべきこととなった税額に係る部分について右相続税の法定納期限の翌日からその新たに納付すべきこととなった税額の納期限までの機関に係る延滞税が発生しないとされた事例
 
<事案>
相続税の申告をした上告人らに対して、相続財産である土地の評価の誤りを理由として更正の請求に基づく減額更正処分がされ、還付加算金を加算して過納金が還付された後に、再び相続財産である土地の評価の誤りを理由として増額更正処分がされた

増額更正により増額された税額について、相続税の法定納期限の翌日から増額された税額の完納の日までの期間に係る延滞税は発生しないと主張し、この延滞税の支払義務が存在しないこととの確認を求めた。 

上告人らは、この増額更正により新たに納付すべきものとされた相続税の本税額を納付したが、国税通則法60条2項、61条1項2号により、相続税の法定納期限からこの増額更正により新たに納付すべきものとされた税額の完納の日までの期間(ただし、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から増額更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間を除くもの。)に係る延滞税の納付義務があることを前提とした通知書の送付を所轄税務署長から受けた。
 
<一審・原審>
減額更正により減額された部分の納付義務は遡及的に消滅し、その後に増額更正がされた場合には増額された税額に係る納付義務が新たな確定
⇒これについて延滞税が発生する。 
   
上告人が上告+上告受理申立て
 
<判断>
上告を受理した上で、
前記増額更正によって増額された税額は、延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税には当たらない

相続税の法定納期限の翌日から増額された税額の納期限までの期間に係る延滞税は発生しないものとし、原判決を破棄し、一審判決を取り消して、上告人らの延滞税の支払義務がないことを確認する旨の判決

<解説>
仮に上告人らが納付すべき相続税について法定納期限の翌日から延滞税が発生することになるとすれば、上告人らは、当初の減額更正における土地の評価の誤りを理由として税額を増額させる判断の変更をした課税庁の行為によって、当初から正しい土地の評価に基づく減額更正がされた場合と比べて税負担が増加するという回避し得ない不利益を被ることになるが、このような帰結は、国税通則法60条1項等において延滞税の発生につき納税者の帰責事由が必要とされていないことや、課税庁は更正を繰り返し行うことができることを勘案しても、明らかに課税上の衡平に反するものであり、延滞税の趣旨及び目的に照らし、上告人らの納付すべき相続税のうち、増額更正により新たに納付すべきものとされた税額に相当する部分についての、相続税の法定納期限の翌日から新たに納付すべきものとされた税額の納期限までの期間に係る延滞税の発生は国税通則法において想定されていないものとみるのが相当であって、右期間に係る右部分の税額については、延滞税発生の根拠となる規定である国税通則法60条1項2号において延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税に当たるものではないとしたもので、国税通則法60条1項2号の規定を、その趣旨から限定的に解釈して、減額更正においても増額更正においても相続税額の変動の理由はいずれも相続財産である土地の評価の誤りとされていたなどといった本件の事実関係の下における判断として、延滞税は発生しないとの結論を導いたもの。

「当初の減額更正における土地の評価の誤りを理由として税額を増額させる判断の変更をした課税庁の行為によって、当初から正しい土地の評価に基づく減額更正がされた場合と比べて税負担が増加するという回避し得ない不利益」

①一旦減額更正がされた後に増額更正がされた場合における前者の時点での還付加算金の額から後者の時点で発生し得る延滞税の額を差し引いた額と、
②当初から正しい税額を前提とする減額更正がされた場合の還付加算金の額を比較した場合に、①と②のいずれの場合においても最終的に納付すべき本税額は同額となるが、還付加算金の発生する期間と延滞税の発生する期間が一致しないことから、還付加算金の率と延滞税の税率とが等しい場合であっても、多くの場合にあっては、①の場合の方が、最終的に納税者にとって不利になる。

(①の場合の還付加算金の額は②の場合の還付加算金の額を上回るものの、①の場合はその差額を超える延滞税が課されることとなる)
本判決は、国税通則法60条1項2号の規定の趣旨からその規定の文言を限定的に解釈したもの。

判例時報2254

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