少年事件と検察官関与決定
福島家裁郡山支部H26.8.27
19歳の少年に対する二件の傷害保険事件について検察官関与決定をし、両事件の非行事実を認定した事例
<事案>
少年が、被害者に暴行を加えて傷害を負わせた甲事件と、友人と共謀の上、被害者に暴行を加えさせて傷害を負わせた乙事件という2件の傷害保護事件。
少年は、甲事件について暴行の実行行為を、乙事件について共謀をそれぞれ否認⇒家庭裁判所は、検察官関与決定をした上で、上記2件の非行事実を認定し、中等少年院送致決定をした。
<規定>
少年法 第22条の2(検察官の関与)
家庭裁判所は、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であつて、次に掲げる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、審判に検察官を出席させることができる。
一 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
二 前号に掲げるもののほか、死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪
2 家庭裁判所は、前項の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聴かなければならない。
3 検察官は、第一項の決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問し、並びに意見を述べることができる。
<解説>
検察官関与決定:
家庭裁判所が、一定の重大事件において、その非行事件を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させる制度(少年法22条の2第1項)。
<趣旨>
証拠の収集、吟味における多角的視点を確保して適正な事実認定を行うことや、裁判所と少年側の対峙状況を回避して、裁判所を公平中立な判断者の立場に専念させることにある。
検察官関与決定があった場合、検察官は、非行事実の認定に資する限度で、
①事実の記録及び証拠物の閲覧・謄写
②審判手続への出席、証拠調手続への立会い
③証人その他の関係人への尋問等
④証拠調べの申出
⑤少年本人尋問
⑥意見陳述
を行う権限がある。
「非行事件」とは、少年の犯した犯罪事実のほか、動機、態様及び結果その他その犯罪に密接に関連する重要事実が含まれる(少年法17条4項)。
判例時報2252
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