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2015年6月16日 (火)

検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促があったときの訴訟費用負担の裁判の執行に関する異議申立ての許否

最高裁H27.2.23   

検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促があったときの訴訟費用負担の裁判の執行に関する異議申立ての許否

<事案>
窃盗被告事件で有罪とされた申立人が、高裁及び最高裁の各訴訟費用負担の裁判につき、刑訴法502条による裁判の執行に関する異議を申し立てた事案。 

検察官の執行指揮に基づき納付告知及び督促はされていたものの、いまだ同法490条1項による徴収命令が出されていなかった⇒この時点で異議申立てをすることが許されているかが問題。

<規定>
刑訴法 第502条〔執行に関する異議の申立て〕
裁判の執行を受ける者又はその法定代理人若しくは保佐人は、執行に関し検察官のした処分を不当とするときは、言渡をした裁判所に異議の申立をすることができる。

刑訴法 第490条〔財産刑等の執行〕
罰金、科料、没収、追徴、過料、没取、訴訟費用、費用賠償又は仮納付の裁判は、検察官の命令によつてこれを執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

刑訴法 第472条〔執行の指揮〕
裁判の執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。但し、第七十条第一項但書の場合、第百八条第一項但書の場合その他その性質上裁判所又は裁判官が指揮すべき場合は、この限りでない。

<判断>
検察官は、訴訟費用負担の裁判について、刑訴法472条の執行指揮をし、これに基づき、徴収担当事務官が、申立人に対し納付告知所及び督促状を送付している。これらは、検察官の執行指揮の内容を告知し納付を催促するため、徴収事務を制度化した徴収事務規定(平成25年3月19日法務省刑総訓第4号)に基づき、検察官の命により送付されたものであり、同法502条の「執行に関し検察官のした処分」であると解すべきであって、同法490条1項による徴収命令の出される前であっても、訴訟費用負担の裁判の執行に対する異議の申立てをすることができる。 

<解説> 
●訴訟費用負担の裁判の執行に対する刑訴法502条の異議申立ての許否:
同条が「刑の執行」とせず「裁判の執行」⇒訴訟費用負担の裁判の執行についても、同条の異議申立てをすることは許される(多数説)。

最高裁H4.7.17:
検察官が訴訟費用の裁判の執行のために発した徴収命令に対する請求異議の訴えが許されるか問題となった事案において、訴訟費用負担の裁判の執行として検察官がした徴収命令に瑕疵があることを理由にその効力を争うには、刑訴法502条の異議申立て及び同法504条の即時抗告の手続によるべきであり、請求異議の訴えによってその効力を争うことは許されない。

訴訟費用負担の裁判の執行に対しても、刑訴法502条の異議申立てをすることは許される、というのが一般的な理解。

●未だ納付告知及び督促がされただけで、刑訴法490条1項による徴収命令が出されていない段階で、異議申立てが許されるか?

裁判の「執行に関し検察官のした処分」とは、検察官が刑訴法の規定に基づいてする裁判の執行に関する処分をいうとされており、刑訴法472条による検察官の執行指揮はこれに当たる

否定説

納付告知及び督促は、検察官が、納付に先立って、申立人に対して既に履行期が到来している徴収金の任意の支払を催告するものに過ぎず、新たに申立人に義務を課したり、権利を制限したりするものではない
vs.
①納付告知書及び督促状は、検察官の執行指揮の内容を告知し納付を督促するために、検察官の検察事務官に対する指示権を根拠に徴収事務を制度化した徴収事務規程に基づき、検察官の命により送付されたものであり、正に検察官による公権力行使と評価することができる
②納付告知及び督促に応じなければ、その後、徴収命令に基づく強制執行手続等に移行することが予定されている以上、この段階で早期に違法な執行を是正する必要がある。

本決定は、検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促は、刑訴法502条の「執行に関し検察官のした処分」に該当するものが解するのが相当。⇒同法490条1項による徴収命令が出される前であっても、訴訟費用負担の裁判の執行に対する異議の申立てをすることができると判示。

判例時報2253

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