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2015年5月12日 (火)

傷害致死の事案につき、懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第一審判決(裁判員判決)及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例

最高裁H26.7.24   

傷害致死の事案につき、懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第一審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例 
 
<事案>
第一審の裁判員判決及びこれを是認した原判決を量刑不当を理由に破棄した最高裁の初めての事例。 
夫婦である被告人両名(夫、当時26歳、妻、当時27歳)が、共謀の上、自宅において、夫が、幼い娘の頭部を平手で一回強打して床に打ち付けさせる暴行を加え死亡させたとうい障害致死事件。
 
<規定>
刑訴法 第411条〔著反正義事由による職権破棄〕
上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
二 刑の量定が甚しく不当であること。

刑訴法 第381条〔量刑不当〕
刑の量定が不当であることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
 
<一審・原審>
検察官の各懲役10年緒求刑に対し、夫婦とも、懲役15年 
 
<判断>
親による幼児に対する傷害致死の事案において、これまでの量刑の傾向から踏み出し、公益の代表者である検察官の懲役10年の求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることにつき、具体的、説得的な根拠を示しているとはいい難い第一審判決及びその量刑を是認した原判決は、量刑不当により破棄を免れない

第一審判決及び原判決を破棄し、夫に対し懲役10年、妻に対しては実行行為に及んでいないことを踏まえ、犯行行為にふさわしい刑を科すという観点から懲役8年とする自判。 
 
<解説>
上告審における量刑審査の運用:
量刑不当を理由に破棄⇒25件、ほとんどが実刑を執行猶予としたもの及び死刑と無期懲役の選択に関するもの。

具体的、説得的な根拠がないのに量刑傾向から踏み出した第一審判決の量刑を控訴審判決が合理的理由なく是認している場合⇒刑訴法411条2号の量刑不当となり得る。

判例時報2250

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