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2015年5月 2日 (土)

地方自治法施行令167条の5の2に基づく入札参加資格の制限が違法とされた事例

水戸地裁H26.7.10   

地方公共団体が一般競争入札により発注する工事につき、地方自治法施行令167条の5の2に基づき入札参加資格の制限がなされたところ、当該制限が違法であるとされた事例
 
<事案>
被告市長が、一般競争入札により発注する工事につき、地方自治法施行令167条の5の2に基づき入札参加資格の制限⇒当該制限の違法性が争われた事案。 

被告市長は、地方自治法施行令1667条の5の2に基づく入札参加資格の制限として、
①平成25年2月27日付けで、「被告との間で同日時点において災害時における応急復旧に関する協定(「災害協定」)を締結していること」との要件(「災害協定締結要件」)を設けた。
②同年4月9日付けで、災害協定締結要件につき、「茨城県塩来土木事業所管内及び茨城県鉾田工事事務所管内(被告又はその周辺四市の管内)に、建設業法に基づく主たる営業所(本店)を有していること」との要件(「本店所在地要件」)に変更。

 
<規定>
地方自治法 第234条(契約の締結) 
売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
 
<争点>
①災害協定締結要件の違法性
②本店所在地要件の違法性 
 
<判断>
●争点①について 

災害協定締結要件に関し、
①近隣住民への配慮等の目的につき、証拠上、当該目的があったとは直ちに認め難い上に、仮に当該目的があったとしても地元業者(災害協定を締結していた業者)に入札参加資格を制限することは相当性を欠く過剰な制約手段
地元業者育成の目的は「当該入札」、すなわち、入札対象の工事自体を適正かつ合理的に行うために特に必要なものとは認められず、また、当該工事自体の適正さ等とは異なる将来の政策課題のために入札資格を制限することは法令の趣旨に反する

同要件の設定について「当該入札を適正かつ合理的に行うために特に必要がある」とはいえず、地方自治法施行令167条の5の2に反する違法なもの。
 
●争点②について
 
本店所在地要件に関しても
①地元業者育成の目的は、上記争点①の判断と同様に法令の趣旨に反する
②競争性を確保したいのであれば、被告市内に支店を置く業者の入札参加資格を制限する必要はなく、同要件は必要性及び合理性を欠く、
③災害復旧工事の迅速、良質かつ効率的な施工という目的については、証拠上、当該目的があったとは直ちに認め難い上に、仮に当該目的があったとしても、被告及び近隣四市の市内に本店を有する業者に入札参加資格を制限することは合理性を欠く過剰な制約手段

同要件の設定についても「当該入札を適正かつ合理的に行うために特に必要がある」とはいえず、地方自治法施行令167条の5の2に反する違法なもの。
 
<解説>
普通地方公共団体が締結する請負等の契約

その経費が住民の税金で賄われる⇒公正性、機会均等性、経済性等の観点から、原則として一般競争入札によることとされ、指名競争入札及び随意契約は例外(地方自治法234条1項2項)。

一般競争入札についても、契約履行確保等の観点から、地方自治法施行令に基づき入札参加資格を制限することが許されており、
具体的には、必要があるときは、実績、経営規模等を要件とする資格を定めること(同令167条の5第1項)や、当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは、事業所の所在地等に関する必要な資格を定めること(同令167条の5の2)などが認められている

普通地方公共団体において、公共工事等の入札参加資格につき、ランクや地域要件を設定しているのが実情であるが、このような入札参加資格の制限については、上記所定の要件を満たす必要がある。

同令167条の5の2における「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるとき」との定めは概括的なものであり、行政庁に一定の裁量を付与したものと解される。
but
具体的な制限措置の違法性の判断については、上記の法令の文言や趣旨に照らし、個別の事案ごとに検討を要する。

判例時報2249

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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