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2015年4月13日 (月)

関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪と実行の着手(肯定)

最高裁H26.11.7   

関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪につき実行の着手があるとされた事例
 
<事案>
税関長の許可を受けないで、うなぎの稚魚をスーツケースに隠匿して成田空港から日航機に積載する方法で輸出しようとした事案で、関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪の実行の着手時期が争われたもの。 
 
<原審>
実行の着手とは、犯罪構成要件の実現に至る現実的危険性を含む行為を開始した時点であって、本件のような事案においては、スーツケースについて同カウンターで運送委託をした時点と解すべきであり、検査済みシールをスーツケースに貼付したまでの事実をもって未遂罪が成立するとはいえず、予備罪が成立するにとどまる。 
 
<判断>
・・・入口にエックス線検査装置が設けられ、周囲から区画されたチェックインカウンターエリア内にある検査済みシールを貼付された手荷物は、航空機積載に向けた一連の手続のうち、無許可輸出が発覚する可能性が最も高い保安検査で問題のないことが確認されたものとして、チェックインカウンターでの運送委託の際にも再確認されることなく、通常、そのまま機内預託手荷物として航空機に積載される扱いとなっていた。
そうすると、本件スーツケース6個を、機内預託手荷物として搭乗予約済みの航空機に積載させる意図の下、機内持込手荷物と偽って保安検査を回避して同エリア内に持ち込み、不正に入手した検査済みシールを貼付した時点では、既に航空機に積載するに至る客観的な危険性が明らかに認められる
⇒関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪の実行の着手があったものとするのが相当。 
 
<解説>
●実行の着手時期:
A:実質的客観説構成要件の実現に至る実質的危険性の観点から判断。
①「危険性」の判断に際し、行為の客観面のみならず行為者の主観面も資料に加えてよい。
行為者の故意のみならず計画をも資料に加えてよい。 

判例:実質的客観説
・ダンプカーにより婦女を他所へ連行した上強姦した場合につき、同女をダンプカー内に引きずり込もうとして暴行を加えた時点において、強姦行為の着手有り(最高裁昭和45.7.28)。
・被害者を失神させた上、自動車ごと海中に転落させて溺死させようとした場合につき、クロロホルムを使って被害者を失神させる行為を開始した時点で殺人罪の実効の着手がある(最高裁H16.3.22)。

その時点で既に強姦や殺人に至る「客観的な危険性が明らかに認められる」


関税法は「輸出」について「内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう」(2条1項2号)
本件のように、外国仕向機に直接積載する方法による輸出の場合は、航空機に積載すれば自動的に外国に向けて送り出される⇒航空機に積載する行為が構成要件該当行為

本判決:
本件当時の機内預託手荷物に関する検査態勢などの本件事実関係を前提に、本件スーツケースをチェックインカウンターエリア内に持ち込み、検査済みシールを貼付した時点では、「既に航空機に積載するに至る客観的な危険性が明らかに認められる」としており、実質的客観説に沿った判断枠組み。

「航空機に積載させる意図の下」とも説示⇒その「客観的な危険性」の判断に際して、行為者の計画をも考慮することを認めた趣旨とも理解できる。

判例時報2247

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