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2015年4月13日 (月)

外国人実習生(中国人)死亡による逸失利益・慰謝料の算定

 千葉地裁H26.9.30   

来日中の外国人実習生(中国人)が死亡した事案における損害賠償額の算定について、逸失利益は、滞在予定期間中はわが国での収入を基礎収入とし、滞在予定期間経過後は、本国での予想収入を基礎収入として算定し、死亡慰謝料は、遺族の生活基盤がある国、支払われた慰謝料が主に費消される国、貨幣価値なども考慮にいれて算定するとされた事例 
 
<事案>
外国人実習生(中国人)が、就業先の同僚から暴行を受けて死亡⇒中国に在住している両親が、加害者である同僚と就業先の会社に対して、被害者に生じた損害として逸失利益と死亡慰謝料、両親固有の損害として慰謝料等の支払を求めた事案。 
被害者は外国人実習生で、実習期間終了後本国に帰国することが予定されていた。
 
<争点>
①民法715条の適用の有無
②過失相殺の可否
③外国人に対しる損害賠償の額 
 
<解説>
●逸失利益の算定   
最高裁H9.1.28:
滞在期間が限定されている外国人の逸失利益の算定が争点となっている事案について、
財産上の損害としての逸失利益は、事故がなかったら存したであろう利益の喪失分として評価算定されるべきものであり、その性質上、種々の証拠資料に基づき相当程度の蓋然性をもって推定される当該被害者の将来の収入などの状況を基礎として算定せざるを得ない。」とした上で、
「一時的にわが国に滞在し将来出国が出国が予定される外国人の事故による逸失利益を算定するにあたっては、予測されるわが国での就労可能期間内はわが国での収入を基礎とし、その後は、想定される出国先での収入等を基礎とするのが合理的であり、わが国における就労可能期間は、来日目的、事故時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である」 

本判決:
わが国における実習期間終了予定までの期間についてわが国での収入をもって基礎収入とし、その後、就労可能年齢である67歳までは、本国である中国に帰国して就労した場合に予想される収入をもって基礎収入とした。

●慰謝料の算定 
最高裁:
慰謝料について「慰謝料額の算定は、原則として、原審の裁量に属するところ」として、日本人以上の慰謝料額を認めるべき事情がある旨主張した上告理由を排斥するにとどまった。

死亡慰謝料額は、行為態様、被害の程度、被害者の年齢・性別、家族構成等を踏まえて、裁判官の裁量により算定されてきたところ、本件では、算定にあたり考慮する要素として、本国の物価水準等をいれることの可否が問題。

A:慰謝料額の算定にあたり、収入等が考慮されることはないし、また、日本人であろうと外国人であろうと精神的苦痛の程度は異なることはない⇒逸失利益とは異なり、本国の物価水準等を考慮せずに算定すべきとの裁判例もあり。

B:精神的苦痛の程度は、日本人だであろうと外国人であろうと異なるところはないとしても、これを形式的に貫くこととなれば、かえって実質的不公平を生じ、あるいはン矛盾した結果となる場合もある。⇒慰謝料の算定にあたり、本国の物価水準等貨幣価値を考慮するという見解。
賃金水準、物価水準、生活水準等の経済的事情の相違を考慮せざるを得ない」とした東京高裁H13.1.25

本判決はB。
慰謝料額の算定にあたり、本件における行為態様、経緯、被害の程度、被害者の年齢、家族構成等の諸々の要素に加えて、遺族の生活の基盤がある国、支払われた慰謝料が主に費消される国と日本との物価水準や生活水準等により貨幣価値が異なることも考慮して判断。

判例時報2248

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