賦課期日の時点において登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録がされていない場合における、賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として登記又は登録されている者の固定資産税の納税義務の有無(肯定)
最高裁H26.9.25
土地又は家屋につき賦課期日の時点において登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録がされていない場合における、賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として登記又は登録されている者の固定資産税の納税義務の有無
<事案>
Xが、坂戸市長から自己所有する家屋に係る平成22年度の固定資産税及び都市計画税の賦課決定処分
⇒Xは賦課期日の時点において登記簿又は家屋補充課税台帳に本件家屋の所有者として登記又は登録されていなかったから、本件家屋に係る平成22年の固定資産税等の納税義務者ではなく、賦課決定は違法であると主張して、Yを相手に、その取消しを求めた。
Xは、平成21年12月7日、坂戸市内に本件家屋を新築。
平成22年10月8日に、所有者をX、登記原因を「平成21年12月7日新築」とする表題登記。
平成22年12月1日、坂戸市長が、平成22年度の家屋課税台帳に所有者をXとするなど所要の事項を登録し、本件家屋に係る平成22年度の固定資産税等の賦課決定処分をした。
<規定>
地方税法343条
固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
地方税法359条
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
<争点>
賦課期日現在の真の所有者であっても、その時点で登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されていない限り、固定資産税の納税義務者である「所有者」に該当せず、当該賦課期日に係る年度の固定資産税の納税義務を負わないものと解すべきか否か
<判断>
土地又は家屋につき、賦課期日の時点において登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録がされていない場合において、賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として登記又は登録されている者は、当該賦課期日に係る年度における固定資産税の納税義務を負うものと解するのが相当。
⇒
Xを納税義務者として本件家屋に係る平成22年度の固定資産税等を賦課した本件処分は適法。
<解説>
土地又は家屋について、賦課期日の時点において登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録がされている場合には、これにより所有者として登記又は登録された者は、賦課期日の時点における真の所有者でなくても、また、賦課期日後賦課決定処分時までにその所有権を他に移転したとしても、当該賦課期日に係る年度における固定資産税の納税義務を負い、真の所有者でないにもかかわらず固定資産税の納税義務を負担した者は、真の所有者に対して不当利得返還請求権を有すると解するのが判例(最高裁昭和30.3.23)。
判例時報2244
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