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2015年3月 7日 (土)

暴力団関係者の(その利用を拒絶している)ゴルフ場利用で詐欺罪が肯定された事例

最高裁H26.3.28    

入会の際に暴力団関係者を同伴しない旨誓約したゴルフ倶楽部会員において、同伴者が暴力団関係者であることを申告せずに同人に関するゴルフ場の施設利用を申し込み、施設を利用させた行為が、刑法246条2項の詐欺罪に当たるとされた事例 
 
<事案>
暴力団員である被告人が、ゴルフ倶楽部会員である共犯者と共謀の上、同倶楽部が約款等により暴力団員の入場及び施設利用を禁止しているのに、共犯者において、被告人が暴力団員であることを申告せずに施設利用を申し込み、被告人が同伴者としてゴルフ場の施設を利用したとして、二項詐欺罪に問われた事案。 
 
<争点>
①共犯者Bにおいて、ゴルフ場の施設利用を申し込む際、積極的に同伴者の被告人が暴力団員でないと虚偽を告げたわけではないし、被告人の本名を記載した組合せ表を提出するなどしており、欺罔行為がない
②ゴルフ場の施設利用料金等を支払って施設利用しており、財産上の損害がない
③被告人には詐欺の故意・共謀がない
 
<判断>
事実関係からすれば、入会の際に暴力団関係者の同伴、紹介をしない旨誓約していた本件ゴルフ倶楽部の会員であるBが同伴者の施設利用を申し込むこと自体、その同伴者が暴力団関係者でないことを保証する旨の意思を表している上、利用客が暴力団関係者かどうかは、本件ゴルフ倶楽部の従業員において施設利用の許否の判断の基礎となる重要な事項であるから、同伴者が暴力団関係者であるのにこれを申告せずに施設利用を申し込む行為は、その同伴者が暴力団関係者でないことを従業員に誤信させようとするものであり、詐欺罪にいう人を欺く行為に他ならず、これによって施設利用契約を成立させ、Bと意を通じた被告人において施設利用をした行為が刑法246条2項の詐欺罪を構成することは明らかである。 
 
<解説> 

入会契約の際に暴力団関係を社を紹介、同伴しない旨誓約している会員が同伴者の施設利用を申し込む行為は、単にその同伴者本人が当該ゴルフ場の施設を通常の方法で利用し、利用後に所定の料金を支払う旨の意思を表示しているだけでなく、その同伴者が暴力団関係者でないことを申込者である会員自身が保証する意思をも黙示的に表示しているものと認められる。

施設利用の申込みの前提として、実行行為者であるBが、入会契約(基本契約)に際して上記のような誓約をしていた点が、大きく異なる事情。 
 
●欺罔行為の内容(重要事項性) 
詐欺罪にいう「人を欺いて」とは、人を錯誤に陥らせることであり、相手方が財産的処分行為をするための判断の基礎となるような重要な事項を偽ること、すなわち、相手方がその点に錯誤がなければ財産的処分行為をしなかったであろう重要な事実を偽ること
その場合の錯誤は、財産的処分をするように動機付けるものであれば足り、法律行為の要素に関する錯誤であると縁由(動機)の錯誤であるとは問わない(通説・判例)。

本決定:
①ゴルフ場が暴力団関係者の施設利用を拒絶するのは、利用客の中に暴力団関係者が混在すると、一般利用客が畏怖するなどして安全、快適なプレー環境が確保できなくなり、利用客の減少につながったり、ゴルフ倶楽部としての信用、格付け等が損なわれたりする危険があるため、これを未然に防止する意図によるものであって、ゴルフ倶楽部の経営上の観点からとられている措置であること
②本件ゴルフ倶楽部においては、利用約款で暴力団員の入場及び施設利用を禁止する旨規定し、入会審査にあたり暴力団関係者を同伴、紹介しない旨誓約させるなどの方策を講じていたほか、長野県防犯協議会事務局から提供される他の加盟ボルフ場による暴力団排除情報をデータベース化した上、予約時又は受付時に利用客の氏名がそのデータベースに登録されていないか確認するなどして暴力団関係者の利用を未然に防いでおり、本件においても、被告人が暴力団員であることが分かれば、施設利用に応じることはなかった

利用者が暴力団関係者かどうかは、本件ゴルフ倶楽部の従業員において施設利用の許否の判断の基礎となる重要な事項である」として、同伴者が暴力団関係者であるのにこれを申告せずに施設利用を申し込む行為は、その同伴者が暴力団関係者でないことを従業員に誤信させようとするものであり、人を欺く行為に当たる

判例時報2244

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