中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律13条の「特定中国残留邦人等」に該当するとされた事例
東京地裁H26.6.17
1.中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律施行規則13条の2にいう「その生まれた日以後中国の地域(中略)においてその者の置かれていた事情にかんがみ、明治44年4月2日から昭和21年12月31日までの間に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働大臣が認めるもの」の意義
2.中国残留法人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律施行規則13条の2にいう「その生まれた日以後中国の地域(中略)においてその者の置かれていた事情にかんがみ、明治44年4月2日から昭和21年12月31日までの間に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働大臣が認めるもの」に当たるとされた事例
<事案>
Xは、昭和26年2月に中国で出生した日本人女性で、昭和61年6月に家族と共に日本に永住帰国。
Xは、厚生労働大臣に対し、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(「法」)13条3項に基づく一時金の支給を申請。
⇒法13条に定める「特定中国残留邦人等」とは認められないとして、申請を却下する旨の決定(本件決定)⇒異議申立て⇒異議申立てを棄却⇒本件決定の取消しを求め、本件訴えを提起
<判断・解説>
本判決は、
中国東北部(旧満州)地域からの引き揚げに関する一般的な事情等を具体的に認定した上、法13条1項が「特定中国残留邦人等」の要件として「昭和21年12月11日以前に生まれたもの」と規定した趣旨は、同日までの間には中国の地域に居住していた者の大部分が引上げに至っていたところ、中国残留邦人等のうち、同日以前に生まれたが引き揚げるに至らなかった者については、それごソ連軍が参戦したことにより生じた混乱によること又はソ連軍が日本人の本国送還について何らの措置を採らないまま撤退したことによる影響、国民政府軍又は中国共産党軍による留用による影響、中国の内戦による影響、集団引き揚げ以外の個別引き揚げが中国政府による帰国の不許可などにより困難であったことによる影響など(ソ連軍の参戦以後の引揚困難事由による影響)によることが強く推定されるため、一律に特別の保護を与えることが適切であるとの考え方によるもの。
法13条1項が「同日後に生まれたものであって同日以前に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者を含む。」と規定した趣旨は、同日後においても、同日後に生まれた中国残留邦人等が置かれていた具体的な事情によっては、ソ連軍の参戦以後の引揚困難事由の影響の下において、本邦へ引き揚げることには困難があって引き続き中国の地域に居住することを余儀なくされたという場合もあったことから、これを、同日以前に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして、事案に応じて保護を与えるものとした。
①中国の地域において昭和26年に生まれ永住帰国した中国残留邦人であっても、同人を養育していた父は、昭和21年3月から留用され、帰国の意思があったにもかかわらずそれがかなわないまま死亡。
②既に一時金を支給する旨の決定を受けている同人の姉は、中国の地域において昭和23年に生まれ、同人と同様の生活状況にあったことがうかがわれることなど
⇒
ソ連軍の参戦以後の政府による留用による影響などの下において、これに起因して、本邦に引き揚げることなく引き続き中国の地域に居住することを余儀なくされたということができる
⇒
規則13条の2にいう「その生まれた日以後中国の地域(中略)においてその者の置かれていた事情にかんがみ、明治44年4月2日から昭和21年12月31日までの間に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働大臣が認めるもの」に当たる。
判例時報2243
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