年金支払特約が付された変額個人年金保険契約によって発生する受給権は、同法24条1項柱書きに規定する「定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利」として、同項に基づいて権利の価額を算定すべき
東京高裁H26.9.11
相続税法3条の定めるみなし相続財産である年金支払特約が付された変額個人年金保険契約によって発生する受給権は、同法24条1項柱書きに規定する「定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利」として、同項に基づいて権利の価額を算定すべきである
<事案>
Xの母Aは、Z(保険会社)との間で、年金支払特約を付加して変額個人年金保険契約を締結し、 保険料3600万円を支払った。
Aはその後死亡し、Xはその唯一の相続人。
Xは、Aの相続に係る相続税の申告において、相続税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)3条の定めるみなし相続財産であるAの加入した上記変額個人年金保険に係る死亡給付金支払請求権(本件受給権)の価額を、同法24条1項1号に従い、有期定期金の残存期間に受けるべき給付金額の総額に所定の割合を乗じて評価し、申告。
⇒
処分行政庁は、本件申告について、本件受給権は同法24条1項柱書きに規定する定期金給付契約に関する権利に該当しないと判断し、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定
⇒
Xが、Y(国)に対し、本件各処分は違法であるとして、その取消しを求めた。
ZはXに補助参加。
<争点>
年金支払特約が付された本件保険契約によって発生する本件受給権は、相続税法24条1項柱書きに規定する「定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利」として、同項に基づいて権利の価額を算定すべきといえるかいなか
<判断>
相続税法24条1項柱書きにいう「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいう。
AとZとの間で本件特約の付された本件保険契約が締結され、本件特約において本件死亡給付金の受取人に指定されていたXが、本件特約の定める本件死亡給付金の支払事由の発生(Aの死亡)により、年金払いとされる本件死亡給付金の請求権(本件受給権)を取得したものと認められる。
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本件受給権は、「定期給付契約に関する権利」に当たり、かつ、「当該契約に係る権利を取得した時において定期金給付事由が発生している」という要件にも該当する。
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本件受給権の価額は、Xの指定により確定した年金受け取り方法を基礎として相続税法24条1項所定の評価方法に基づいて算定されることになるべきところ、Xの指定により、本件受給権は、残存期間が36年の有期定期金を内容とするものとして確定している。
⇒
その価額は、Xが受取るべき死亡給付金の総額6120万8532円に100分の20を乗じた1224万1706円となる。
判例時報2242
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