貸金業法4条1項2号に定義されている同法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれない
最高裁H26.7.18
貸金業法4条1項2号に定義されている同法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれるか
貸金業法3条所定の登録(「貸金業登録」)を受けた貸金業者であるXは、平成22年11月4日、大阪府知事に対し貸金業登録の更新の申請
⇒
①大阪府知事は、同年12月15日、Xに対し、Xの監査役が執行猶予付き禁固刑の判決を受けており貸金業法6条1項4号に該当するため、Xは同項9号の登録拒否事由に該当するとして、上記申請を拒否する旨の処分。
②Xは同号に該当するに至ったため同法24条の6の5第1項1号の登録取消事由に該当するとして、Xの貸金業登録を取り消す旨の処分。
⇒
Xが、監査役は貸金業法6条1項9号の役員には含まれず、Xは同号及び同法24条の6の5第1項1号のいずれにも該当しないと主張し、Y(大阪府)を相手に、上記各処分の取消し等を求めた事案。
<規定>
貸金業法4条1項2号は、同号の「役員」の定義につき、「業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者をいい、いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し、これらの者と同等以上の支配力を有するものと認められる者として内閣府令で定めるものを含む。」と規定し(「本件定義規定」)、同法6条1項9号の「役員」も本件定義規定により定義されている。
<1審>
株式会社の監査役は、本件定義規定の「これらに準ずる者」の該当
<原審>
監査役の権限は取締役等の有する権限に比して間接的かつ事後的なものであり、監査役の権限が直ちに取締役等に準ずるものと言うことはできない
⇒
監査役は本件定義規定の「これらに準ずる者」には該当せず、貸金業法6条1項9号の「役員」に当たらない。
⇒
1審判決を破棄し上記各処分の取消請求をいずれも認容。
<判断>
本件定義規定により定義される貸金業法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれない旨判断し、上告人の上告を棄却。
<解説>
本件定義規定と同様の定義を定めていた貸金業法4条1項2号につき、大蔵省銀行局長通達「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」第1の3(1)イ(イ)は、同号にいう「これらに準ずる者」に監査役が含まれると解しており、現行の貸金業法においてもその所管庁において上記通達の解釈が踏襲されている。
but
貸金業法は、役員の定義を定める規定(「役員定義規定」)を本件定義規定のほかにも置いているところ、貸金業法中の役員定義規定には、本件定義規定と同様に監査役を列記しないものとこれを明文で列記するものとの各類型の規定が併存。
これらの定義規定を新設する改正の度に、同法4条1項2号中の本件定義規定の及ぶべき範囲の定めが改正されている。
⇒
同法中の役員定義規定において監査役を明文で列記するかどうかは、あえて区別して差異が設けられている。
貸金業法中の各役員定義規定の間で監査役の列記の有無につき区別して差異が設けられている中で、本件定義規定にはこれが列記されていない
⇒
本件定義規定により定義される役員に含まれる者の範囲に関する解釈が事業を営むのに必要な登録の取消し等の不利益処分の要件に関するものであることに鑑みても、本件定義規定にいう「これらに準ずる者」に監査役が含まれると解することは困難。
⇒
本件定義規定により定義されている貸金業法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれないと解した。
本判決は、貸金業法中の各役員定義規定には監査役を列記する類型のものがあり、その列記の有無につき区別して差異が設けられていることなどに着目し、これが列記されていない本件定義規定についてはその列記の有無の差異に則して監査役は含まれないと解したもの。
判例時報2239
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