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2015年1月21日 (水)

口頭による採用内定契約の成立が認められ、使用者による同契約の解約が採用予定者に対する不法行為に当たるとされた事例

福井地裁H26.5.2   

口頭による採用内定契約の成立が認められ、使用者による同契約の解約が採用予定者に対する不法行為に当たるとされた事例 
 
<事案>
Xが、XとYとはYがXを将来雇用する旨の内定契約を締結⇒Xは当時勤務していた会社を退職⇒Yが本件内定契約を違法に取り消したなどと主張し、不法行為に基づき、Xが本件内定契約に基づいてYに就職していたのであれば得られたであろう賃金相当の逸失利益、慰謝料及び弁護士費用相当額の損害賠償を求めた。 

Xは、当初労働審判手続を申立て⇒相手方(Y)が申立人(X)に対して一定額を支払う旨等を内容とする労働審判⇒当事者双方が異議⇒訴訟へ移行。
 
<争点>
本件内定契約の成否
 
<判断>
●Y代表者の供述の内容が、XとY代表者とが会話をしていた時間や、録音等の客観的証拠から認定できるその他の客観的な事実関係と整合的でない。
⇒Y代表者の供述を排斥。
これらの事実関係と整合的なXの供述に信用性を認める

口頭により、Xが将来訴外会社を退職してYに入社することなどを内容とする始期付きの労働契約が成立したと認定。

●Yはその後本件労働契約を解約したが、同解約に合理的ないし社会通念上相当な理由があったとも認められない

Yによる本件労働契約の解約はXに対する不法行為を構成するとして、Xの請求を一部認容。 
 
<解説>
採用内定により成立する契約の法的性質については、当該契約が締結された際の具体的な事実関係に即して個別に検討されるべきものであるが、始期付き、解約権留保付きの労働契約であるというのが一般(菅野)。

使用者が上記労働契約を恣意的に取消した場合には、労働者からの不法行為に基づく損害賠償請求が認められる(菅野)。

上記労働契約の取消しが不法行為に当たるか否かを検討するに際しては、同取消しが留保解約権の行使として許されるものであるかどうかを検討すべきところ、かかる留保解約権に基づく採用内定の取消事由は、採用内定の当時知ることができず、また、知ることができないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる(最高裁昭和54.7.20)。

本判決は、本件内定契約の成立を認めた上で、Yは本件内定契約を合理的理由なく解約したとして、解約がXに対する不法行為を構成するものと判断。

判例時報2239

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