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2014年12月28日 (日)

ユノカル基準(ユノカルルール)(米国判例)

■取締役の義務・・・敵対的買収に対する防衛策(1)
   
Unocal Corp. v. mesa Petroleum Co. 493 a.2d 946(Del.1985)
 
<事案>
Unocal の約13%の株式を保有するMesaは、約37%の株式について1株あたり54ドルの価格で公開買付を開始。
Mesaは、公開付け完了後、UnocalをMesaの関連会社と合併させて、54ドルを大きく下回る価値しかないジャンク・ボンドなどの証券を対価として残存株主の追い出しを行う「2段階買収」を予定。

Unocal の取締役会は、上記買収に対する防衛手段として、Mesaを除く株主を対象として、Mesaの申出価格よりも高値(1株あたり72ドル)で自己株式の49%を取得する公開買付けを行うことを決議し、開始

Mesaは、Unocalによる自己株式公開買付けの効力を争う訴訟をデラウェア衡平法裁判所に提起。

衡平法裁判所の副長官は、Mesaを対象に含めなければ自己株式公開買付けをしてはならないとする緊急差止命令を発令

Unocalがデラウェア最高裁判所への中間上訴⇒副長官は、法定の要件を満たさないとして却下
⇒最高裁判所は、法定の要件を満たすと判断。

副長官は、審尋を踏まえて差止仮処分を発令⇒衡平裁判所は、中間上訴を最高裁判所に移送⇒最高裁判所は受理。

<Mの主張>
自己株式公開買付けに際しMesaが保有する株式を公開買付けの対象外とする差別的な自己株式取得については、株主である取締役会メンバー自身が自らかかる自己株式公開買付けに応じて一部の株主(Mesa)が享受し得ない経済的便益を得ることができる⇒経営判断原則は適用されない⇒取締役会が本件の差別的な自己株式取得を行うことは、信認義務違反にあたり許されない。
特定の株主について、このような形で差別することは許されない。

<Uの主張>
Mesaに対して「公正」であるべき義務を負わない。
←Unocalの取締役会は、合理的かつ誠実にMesaによる買収が強圧的かつ不適当だと結論付けており、Mesa自身がかかる買収を行うことにより差別的取扱いを求めたと言える。
Unocalの取締役会による自己株式公開買付けの決定は、誠実に、十分な情報に基づき、かつ相当の注意を払って行われており、Mesaの有害な戦略から会社と株主を守るための防衛手段として適当。

<争点>
(1)防衛目的の自己株式公開買付けに関する取締役会の権限
(2)経営判断原則の意義
(3)経営判断原則の適用にあたっての制約
(4)差別的自己株式取得の可否 
 
<判断> 
●(1)(防衛目的の自己株式公開買付けに関する取締役会の権限)について 

デラウェア会社法141条(a)項が取締役に事業及び業務に関する権能を付与しており、同法第160条(a)項が取締役会に自己株式の取引についての広範な権能を認めている
自らの保身を唯一または主たる目的とする場合を除き、デラウェア州法人は、自己株式取得に際して株主毎に異なる取り扱いをすることができる。

かかる取締役会の権限は、株主を含む会社企業体を合理的に予見できる害悪から守るという根源的な義務から導き出される。
 
●(2)(経営判断原則の意義)について 

経営判断原則:業務上の判断を行うに際し、会社の取締役は、十分な情報に基づき誠意を持って、かつ最も会社の利益に資するとの考えに基づいて行動したとの推定を意味し(Aronson v. Lewis(Del.1984))、取締役会の判断が合理的な業務上の目的に帰するものと言えれば、裁判所は、取締役会の判断に代えて自らの判断を適用することはできないというもの(Sinclair Oil Corp. v. Levien (Del.1971))。

自己株式取得の場合、利益相反の懸念がある⇒同原則の適用を受けるには、取締役は、ある者による株式保有が会社方針および効率性に危険を及ぼしていると信ずるに足りる合理的な根拠を示さなければならずこの立証にあたっては、誠実かつ合理的な調査を行ったことを示せば足りる

過半数が社外取締役からなる取締役会の承認があれば、上記の立証を補強することになる。

●(3)(経営判断原則の適用にあたっての制約)について

取締役は、会社の株主の最大の利益にかなうように行動すべき信認義務を負っており、また、取締役の善管注意義務は、予見される害悪から会社および株主を守ることをも含むもの。

一定の制約:
自らの保身を唯一または主たる目的として自己株式の買戻しを行ってはならない

取締役は、公開買付けに対抗する防衛手段が会社および株主の利益を詐欺や不正行為なくして誠実に慮った上で講じられていることを立証する必要

講じられた防衛手段は、直面する脅威の程度に応じて合理的なものでなければならないという制約。

防衛手段が脅威の程度との関係で合理的かどうかを判断するにあたっては、買付価格の不当性、買付けの性質・タイミング、違法性の問題、株主以外の構成員(債権者・従業員等)への影響、買付け不成就のリスク、交換する証券の内容等を勘案する必要。

Mesa を排除したUnocal の差別的自己株式公開買付けは、Mesaがグリーンメーラーとして有名であることをも加味すると、直面する脅威に対応して合理的な関連性を有するもの。
Unocalの取締役のかかる判断は、公開買付制度の基礎となっている公平性の概念とも整合的であり、少数株主が自らの所有する株式についてその価値に見合う対価を受け取れるようにする取締役の義務にも沿うもの。

●(4) (差別的自己株式取得の可否)について

今回の自己株式公開買付けは、株主ごとに異なる取扱いをするもの。
but
会社が直面している脅威に鑑みれば、取締役会が中立であり、誠実にかつ善管注意義務を尽くして行動していれば、裁量権の濫用がない限り、その判断は、経営判断の適切な行使として支持される。

取締役が会社による自己株式公開買付けに応募して経済的利益を得ることができる点は、経営判断原則の適用を妨げるものではない

取締役は、敵対的公開買付けを行った株主に対しても忠実義務を負うが、会社に対する破壊的脅威に直面したときには、同時に会社および他の株主を防衛する義務をも負う。

Mesaの公開買付けが不適切なものであるとの誠実な信念に基づいてUnocalの取締役会が判断を下していることを衡平裁判所が認定Unocalの取締役会は、その立証責任を十分に尽くしているというべき。
 
取締役の判断が、主として、取締役自身の保身目的または詐欺、不誠実、情報の欠如などの信認義務違反に基づくものであることが立証されない限り、取締役の行為には経営判断原則が適用され、是認されるべき。
⇒原決定を破棄し、差止仮処分命令を取り消した。
 
<解説>   
従来、主要目的ルールと経営判断の原則の枠組みによって判断。
vs.
①取締役の利益相反問題との調整に難。
②敵対的買収の正に、正の面(経営者への規律づけ、企業価値の増加など)以外に負の面(2段階公開買付けによる株主の合理的判断の機会の喪失、企業解体や従業員の大量失業、過重債務による経営破綻など)⇒新たな判断枠組みの必要性が高まる。
   
本決定は、利益相反問題に配慮しつつ、適切な判断手続を経ることを要求するなど、従前よりも厳格な条件の下で経営判断原則を適用する判断枠組みを提示。

防衛手段としての差別的な自己株式公開買付けは、その後証券取引委員会(SEC)による規則変更により禁止されるが、ユノカルルールの枠組みは、その後に防衛手段として一般化するライツ・プラン(ポイゾン・ピル)に関する判断においても利用されている。

アメリカ法判例百選119

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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