諫早湾堤防開門禁止間接強制事件執行抗告審決定
福岡高裁H26.7.18
国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の解放禁止仮処分決定に基づく間接強制の申立てについて、制裁金の支払を命じた原決定を支持し、執行抗告が棄却された事例
諫早湾堤防開門禁止間接強制事件執行抗告審決定
<事案>
国営諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門調査をめぐり、開門に反対する営農者であるXらが、国Yに対して開門の差止めを命じた仮処分決定に基づき、Yに対して間接強制の申立てをした事案。
<規定>
民事執行法 第172条(間接強制)
作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
・・・
<原決定>
開門したときは、Y(国)は、Xらに対し、違反行為をした1日につき49万円を支払うよう命じた。
⇒Yが執行抗告。
<判断>
(1)Yは、排水門を開門するための準備にとりかかり、必要な予算措置を講じていることなどからすれば、解放禁止決定に違反して開門するおそれを否定することはできない。
(2)漁業者からの排水門の解放を求める確定判決と本件仮処分に基づく解放禁止を命ずる相矛盾する判決・決定があっても、当事者を異にするから本件確定判決の存在は、解放禁止義務の履行に関し、Yのみでは排除できない事実上の障害にはならないなどの理由を付加するほか、原決定の理由を引用し、原決定は相当であると判断し、抗告を棄却。
<解説>
民執法172条は、不作を命ずる債務の強制執行は、間接強制によって行うことを定めている。
間接強制決定を発令する要件として、債務者が不作為義務に現に違反している事実を立証する必要があるか?
最高裁H17.12.9:
債務者がその不作為義務に違反するおそれのあることを立証すれば足り、現にその不作為義務に違反していることを立証する必要はない。
判例時報2234
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