(刑事)再審請求者の死亡で再審請求事件の手続は終了するとの判断
①最高裁H23.3.27
②最高裁H26.1.27
1.再審請求事件の特別抗告審において有罪の言渡しを受けた者の兄である申立人の死亡により再審請求事件の手続の終了宣言がされた事例(①事件)
2.有罪の言渡しを受けた者の養子である申立人の死亡を理由とする旧刑訴法による再審請求事件の手続終了宣言に対する特別抗告が棄却された事例(②事件)
<事案>
有罪の言渡しを受けた者の親族らによる再審請求事件についても、請求人が死亡した時点で再審請求手続が当然に終了するかという問題に関する最高裁決定 。
<規定>
刑訴法 第439条〔再審請求権者〕
再審の請求は、左の者がこれをすることができる。
一 検察官
二 有罪の言渡を受けた者
三 有罪の言渡を受けた者の法定代理人及び保佐人
四 有罪の言渡を受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態に在る場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹
<①事件>
死刑確定者の兄が刑訴法439条1項4号に基づき地裁に平成18年9月再審請求⇒平成21年2月に棄却⇒平成25年1月に即時抗告も棄却⇒弁護人が最高裁に特別抗告
請求人は平成22年3月に死亡
【判断】
・・・本件再審請求事件の手続は、申立人の死亡により終了したものというべきである。
<②事件>
有罪の言渡しを受けた者が死亡した後に、その親族が死後再審として再審請求。その審理中に請求人も死亡。
⇒原審が再審請求事件の手続終了宣言⇒弁護人が特別抗告
【判断】
適法な抗告理由に当たらないと抗告棄却。
<解説>
刑訴法や旧刑訴法には、再審請求権者が再審請求をした後、その裁判前に死亡した場合の手続の帰趨について定めた規定はない。
判例:再審請求者が有罪の言渡しを受けた者本人である場合について、
「旧刑訴法や刑訴応急措置法には、このような場合に申立人の親族らに対し申立人の再審請求者たる地位の承継を認める規定がないから、本件再審請求事件の手続は、申立人の死亡により終了したものと言わなければならない」⇒再審請求事件の手続の終了を宣言(最高裁H3.1.25)
①旧刑訴法は、再審請求に対する決定前の手続を専ら請求の当否を決するためのものとして構成しているため、その基本的性格は裁判所対再審請求人の関係であって、請求人の存在は重要なもの⇒その死亡によって手続は本質的な形を失い、当該再審請求事件は実質上終了せざるを得ない
②有罪の言渡しを受けた者の再審請求権については、訴訟手続の受継を認めた民訴法204条(現行民訴法124条)のように訴訟物に関する利益の承継の観念を入れる余地はない上、検察官が請求権者の場合と異なり、公益上のものではなく、有罪の言渡しを受けた者の救済を目的とするものであり、その性質は一身に専属する権利と解される。
⇒
当然終了説(判例)。
今回の2つの決定は、親族らによる再審請求についても、請求人が死亡した時点で再審請求事件の手続が終了することを明らかにしたもの。
判例時報2230
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