« 公判前整理手続で確認された争点に明示的に掲げられなかった点についての認定の可否(適法) | トップページ | 更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性(肯定) »

2014年10月 5日 (日)

国民年金法施行規則31条2項4号の「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」の意義

東京地裁H25.11.8   

1.国民年金法施行規則31条2項4号の「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」の意義
2.20歳前に初診日のある精神遅滞により20歳に達した日において法定の障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを理由とする障害基礎年金(国民年金法30条の4第1項)の裁定請求を黙示に却下した裁定処分が取り消された事例
 
<事案>
Xが、社会保険庁長官(当時)に対し、20歳前に初診日のある精神遅滞により、
主位的20歳に達した日において法定の障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを理由とする障害基礎年金(20歳前障害基礎年金。国民年金法30条の4第1項)の支給を求め、
予備的20歳に達した日後に法定の障害の状態に該当するに至ったことを理由とする障害基礎年金(20歳前後事後重症型障害基礎年金、国民年金法30条の4第2項)の支給を求める裁定請求
⇒社会保険庁長官から、予備的請求である20歳前事後重症型障害基礎年金の請求を認め、主位的請求である20歳前障害基礎年金の請求を黙示に却下する裁定処分(本件処分)。

上記却下部分を不服としてその取消しを求めた事案。 

<問題>
Xは、昭和56年7月生まれの女性であり、昭和63年6月(6歳)に精神遅滞であると診断(初診日)。

Xは、初診日から1年6月を経過した日(障害認定日)以後に20歳に達している
⇒Xについて20歳前障害基礎年金の受給権を認めるためには、Xが20歳に達した日である平成13年7月(本件基準日)において、Xが精神遅滞により法定の障害等級に該当する程度の状態にあたっと認められる必要があった。 

国民年金法16条の規定による障害基礎年金についての裁定の請求は、所定の事項を記載した請求書を社会保険庁長官(現在は厚生労働大臣)に提出することによって行わなければならず、この請求書には、「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」を添えなければならない(国民年金法施行規則31条2項4号)。
 
<争点>
Xが20歳に達した本件基準日当時、精神遅滞により障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあったか否か。
これに関連して、国民年金法施行規則31条2項4号の定める「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」の意義。 

<判断>

国民年金法施行規則31条2項4号の趣旨は、専門的知見を有する医師等が作成した診断書には、一般的にみて客観性と信用性があると認められることから、これを必須の資料とすることで、裁定機関の認定判断の客観性を担保するとともに、その認定判断を公平なものとするところにある。

裁定請求者が提出した診断書又は診療記録が、障害の状態が問題とされる当時において裁定請求者の診療に実際に関与したことのない医師等により作成されたものである場合であっても、それが故に当該診断書等が上記規則にいう「診断書」に該当しないとして障害の判定を行わないとすることは相当ではなく、裁定請求者が当該診断書等に加えて提出した他の資料が一般的な客観性と信用性を有するものと評価することができ、かつ、それらが当該診断書等を補完するするものとなり得ると認められるのであれば、当該診断書等のその他の資料の提出をもって、上記規則にいう「診断書」の提出があったものと取り扱い、・・・・当該診断書等の具体的な信用性を吟味した上で、障害の状態が問題とされる当時における障害の程度の判定を行うべきものと解することが相当。
 

Xが提出した他の資料が、医学的知見の側面及び日常生活状況の側面において、それぞれ、一般的な客観性と信用性を有するもので、本件診断書を補完するものとなり得ると認められる
本件診断書とこれらの各資料の提出をもって国民年金法施行規則31条2項4号にいう診断書の提出があったものとして取り扱うことが相当

本件診断書と他の資料の具体的な信用性を詳細に検討した上で、これらを総合的に判断し、Xが本件基準日当時、精神遅滞により障害東等級2級に該当する程度の障害の状態にあったと認定

本件処分のうち主位的請求を黙示に却下した処分は違法であるとして、これを取り消した。

<解説>
問題となって疾病が精神遅滞であり、時間が経過しても障害の基本特性等が変化しないという特色を有している点も考慮されたもの。

判例時報2228

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 公判前整理手続で確認された争点に明示的に掲げられなかった点についての認定の可否(適法) | トップページ | 更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性(肯定) »

判例」カテゴリの記事

行政」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 国民年金法施行規則31条2項4号の「障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書」の意義:

« 公判前整理手続で確認された争点に明示的に掲げられなかった点についての認定の可否(適法) | トップページ | 更生債権に関する訴訟が更正手続開始前に係属し受継されることなく終了した場合における当該訴訟に係る訴訟費用請求権の更生債権該当性(肯定) »