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2014年10月24日 (金)

別除権の行使等に関する協定における解除条件の解釈と再生計画履行完了前の破産

最高裁H26.6.5   

再生債務者と別除権者との間で締結された別除権の行使等に関する協定における同協定の解除条件に関する合意が、再生債務者がその再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から同協定が効力を失う旨の内容を含むものとされた事例 
 
<事案>
再生手続終結の決定後に破産手続開始の決定を受けたA株式会社の破産管財人であるXが、A社の工場等の土地建物(「本件各不動産」)を目的とする担保不動産競売事件において作成された配当表の取消しを求める配当異議訴訟。 

Xは、本件各別除権協定により、別除権の目的である本件各不動産の受戻しの価格定められ、各担保権の被担保債権の額がこれらの受戻価格に減額されたから、Yらは、これらの受戻価格から既払金を控除した額を超える部分につき、配当を受け得る地位にないと主張。

Yらは、本件各別除権協定は破産手続開始の決定がされたことにより失効したと主張
本件各別除権協定に係る協定書には、協定の解除条件を定めた条項が含まれており、「本件各別除権協定は、再生計画認可の決定の効力が生じないことが確定すること、再生計画不認可の決定が確定すること又は再生手続廃止の決定がされることを解除条件とする」というもの。


再生手続開始決定⇒本件各別除権協定締結⇒再生計画案が可決され再生計画認可の決定⇒平成17年10月、再生計画認可の決定が確定した後3年を経過したとして再生手続終結の決定
⇒平成20年1月破産手続開始決定を受け、破産管財人としてXが選任
⇒Yら側は、本件各不動産の担保不動産競売の申立てをし、平成20年10月、その開始決定
⇒競売事件の配当期日においてXが異議の申出
⇒原判決は、本件破産手続開始決定は本件解除条件条項で定められた解除条件のいずれにも該当せず、本件各別除権協定は失効していないとして、Xの請求を認容。
 
<判断> 
「別除権の行使等に関する協定(別除権の目的である不動産につきその被担保債権の額よりも減額された受戻しの価格を定めて再生債務者が別除権者に外資これを分割弁済することとし、再生債務者がその分割弁済を完了したときは別除権者の担保権が消滅する旨を再生債務者と別除権者との間で定めたもの)中にある再生手続廃止の決定がされること等を同協定の解除条件とする旨の合意は、再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続き開始の決定がされることが解除条件として明記されていなくても、これを解除条件から除外する趣旨であると解すべき事情がうかがわれないなど判示の事情の下では、再生債務者が上記破産手続開始の決定を受けた時から同協定はその効力を失う旨の内容をも含むものと解すべきである。」と判示。

原判決を破棄した上、Xの請求を棄却した第一審判決は正当であるとしてXの控訴を棄却。 
 
<解説>

別除権協定:
別除権者と再生債務者等との間で、別除権の基礎となる担保権の内容の変更、被担保債権の弁済方法、順調に弁済されている間の担保権実行禁止と弁済完了時の担保権の消滅等を定める合意をいい、別除権の目的財産の受戻し(民事再生法41条1項9号)の合意や不足額確定の合意も別除権協定の一種。

別除権者は、再生手続外で権利行使ができる(法53条2項)⇒再生債務者としては、事業の継続のために必要不可欠な財産に設定されている担保権が実行されると、事業の継続が困難となり、再生手続が遂行できなくなってしまう
これに対し再生債務者が取りうる手段として、担保権の実行手続の中止命令(法31条)、担保権消滅の許可(法148条)が用意されているが、一定の制約や限界。

再生債務者としては、別除権者との間で別除権協定を締結する必要。

別除権者にとっても、経済的合理性の観点から、別除権協定を締結した方が有利な場合がある。


個別的な契約条項の解釈の問題として、
A:本件解約条件条項における解除条件を文言どおりに解釈して、本件では解除条件のいずれにも当たらないから解除条件は成就しないとする見解
B:本件解除条件条項における解除条件を例示的なものと解釈して、本件各別除権協定の趣旨・目的に照らして、本件では解除条件が成就することになるとする見解 

別除権協定が解除された場合:
A:担保権の被担保債権の額が別除権協定の締結前の額に復活する(復活説)
~担保権者の利益を保護
B:復活しない(固定説)
~不足額責任主義(法88条、182条)を重視


本判決:
契約当事者の合理的意思解釈として、本件各別除権協定においける本件解除条件条項に係る合意が、再生債務者がその再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から本件各別除権協定はその効力を失う。 

本件各別除権協定再生債務者につき民事再生法の規定に従った再生計画の遂行を通じてその事業の再生が図られることを前提としてその実現を可能とするために締結されたものであり、そのため、その前提が失われたというべき事由が生じたことを本件各別除権協定に定める解除条件としている。
②本件の場合が再生手続廃止の決定がされてこれに伴い職権による破産手続開始の決定がされる場合と状況的に類似
③本件各別除権協定の締結に際し、本件のような場合を解除条件から除外する趣旨で本件解除条件条項中に明記しなかったと解すべき事情もうかがわれない

判例時報2230

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