« 確定した前訴(差止請求)と同一の当事者間における同前訴と同一特許に基づく本件の請求(損害賠償請求)においては、信義則上、前訴判決で判断された構成要件解釈と異なる主張をすることはできないとされた事例 | トップページ | 共益債権に当たる債権を付記なしで再生債権として届出をし、再生計画案が付議された場合の共益債権としての権利行使(否定) »

2014年10月13日 (月)

中高層建築物の日影規制に関し、閉鎖方式を採用し、発散方式に基づく建築確認が違法とされた事例

さいたま地裁H26.3.19   

建築基準法56条の2に定める中高層建築物の日影規制に関し、建築基準法施行令135条の12第1項1号の緩和措置を適用する場合の解釈として、閉鎖方法を採用し、 発散方式に基づく建築確認が違法とされた事例

<事案>
さいたま市内に建築予定の8階建ての建築物の周辺住民であるX1ないしX3が、本件建築物の建築確認を行った指定確認検査機関であるYを被告として、本件建築確認には、建築基準法法56条の2第1項、3項及び同法施行令135条の12第1項1号の解釈を誤った違法があると主張して、その取消しを求めた

<解説>
法56条の2第1項は、中高層の建築物につき、敷地境界線からの水平距離が5メートルを超える範囲を対象として、一定時間以上、当該建築物による日影を生じさせてはならない旨の規制。 

本件建築物に適用される日影規制は、冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間、平均地盤面からの高さ4mの水平面において、敷地境界線からの水平距離が5mを超えて10m以内の範囲では2.5時間以上の日影を生じさせてはならないというもの。

法56条の2第3項は、建築物が隣地に生じさせる日影に着目して建築物の形態を規制するという日影規制の考え方に基づき、同敷地の周囲の空地が建築敷地とならないことがほぼ確実である場合等について緩和を認めており、これを受けて令135条の12第1項1号が規定

当該建築物の敷地が道路等に接する場合には、同号により、当該道路等に接する敷地境界線は当該道路等の幅の2分の1だけ外側にあるものとみなされ、それらの幅が10mを超えるときは、それらの反対側の境界線から当該敷地側に水平距離5mの線が敷地境界線とみなされる。(「みなし敷地境界線」)

<争点>
Yは、発散方式に基づいてみなし敷地境界線をさだめ、本件建築確認を行った。
Xらは、令135条の12第1項1号の解釈としては閉鎖方式が相当であり、発散方式は誤りであると主張。 

<判断>
一般に「幅」という言葉は、細長く続く物の両端を直角に切る長さを指すものと解されているのであり、基本的には当該道路の属性によって一義的客観的に定める
⇒法は、当該道路の上記概念による「幅」という一義的客観的な属性によって、みなし敷地境界線の定め方の区別基準とすることを想定。
⇒令135条の12第1項1号の「幅」は、当該道路の直交方向の直線の距離を指すと解するのが自然。 

令135条の12第1項1号により設定されるのは、みなし「敷地」境界線であるところ、「敷地」というのは、通常、建築物等が設置されている一定範囲の区切られた土地を指す言葉。
⇒みなし敷地境界線も閉鎖された線である一定範囲の区切られた土地の外周線を指すと解するのが自然。

閉鎖方式は、みなし敷地境界線を基準にして、令による緩和措置がない場合と同様の方法により測定線を定めるもの⇒法56条の2による日影規制の趣旨に沿う

「幅」、「敷地」境界線という文理にも整合

発散方式
は、敷地と道路との境界線から放射状任意に方向に伸ばした線の長さを「幅」と捉えることになるが、かような解釈は、条文の文言からおよそかけ離れている

いかに細い道路であっても、直線状のものである限り、放射線の取り方によって10m以上の「幅」が生じ、令135条の12第1項1号但書の適用のを受けることになり、法が当該道路の一義的客観的属性によってみなし敷地境界線の定め方を区分していることとも整合しない

発散方式ではみなし敷地境界線が道路等に沿って延伸し、理論上無限に広がることになるが、これも「敷地」という文言と大きくかけ離れている

発散方式を採用すると、緩和措置のない場合に比して、三棟以上の建築物による複合日影が生じるおそれが増大
⇒複合日影を考慮して一定の範囲における日照時間の制限を規定した方56条の2第1項の趣旨を没却
しかねない危険性を有する。

令135条の12第1項1号のみなし敷地境界線は、閉鎖方式によって定めるべきものと解するのが相当。

本件建築物の建築計画は、法56条の2の定める日影規制に適合しないことになり、本件建築確認は、建築基準関係規定に適合しない建築計画について確認したものとして違法。

判例時報2229

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 確定した前訴(差止請求)と同一の当事者間における同前訴と同一特許に基づく本件の請求(損害賠償請求)においては、信義則上、前訴判決で判断された構成要件解釈と異なる主張をすることはできないとされた事例 | トップページ | 共益債権に当たる債権を付記なしで再生債権として届出をし、再生計画案が付議された場合の共益債権としての権利行使(否定) »

判例」カテゴリの記事

行政」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中高層建築物の日影規制に関し、閉鎖方式を採用し、発散方式に基づく建築確認が違法とされた事例:

« 確定した前訴(差止請求)と同一の当事者間における同前訴と同一特許に基づく本件の請求(損害賠償請求)においては、信義則上、前訴判決で判断された構成要件解釈と異なる主張をすることはできないとされた事例 | トップページ | 共益債権に当たる債権を付記なしで再生債権として届出をし、再生計画案が付議された場合の共益債権としての権利行使(否定) »