マンション管理規約における違約金としての弁護士費用の解釈
東京高裁H26.4.16
マンション管理規約における「区分所有者が管理組合にに支払うべき費用を所定の支払期日までに支払わないときは、管理組合は当該区分所有者に対し、違約金としての弁護士費用を加算して請求することができる」旨の定めは合理的であり、違約金としての弁護士費用は、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されるとされた事例
<事案>
Xは、本件建物の区分所有者の全員をもって本件建物等の管理を行うために構成された団体(建物の区分所有者等に関する法律3条)であり、Yは、本件建物の居室の区分所有者。
Xは、Yに対し、本件建物の管理規約に基づき、未払管理費(修繕積立金等を含む)、確定遅延損害金、弁護士費用、遅延損害金の支払を請求。
管理規約は、弁護士費用につき、「区分所有者が管理組合に支払うべき費用を所定の支払期日までに支払わないときは、管理組合は当該区分所有者に対し、違約金としての弁護士費用を加算して請求することができる」旨定める。
<原審>
弁護士費用については、管理規約に基づく実費相当額ではなく裁判所が相当と認める額に限定して認容。
<判断>
本件管理規約の定める「違約金としての弁護士費用」の違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるもの。
債務不履行に基づく損害賠償を請求する際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できない。・・・・衡平の観点から問題であり、管理規約により弁護士費用を違約金として請求することができるように定めている。
この定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当である。
⇒違約金としての弁護士費用は、上記の趣旨からして、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解される。
<解説>
●
マンション管理規約における「区分所有者が管理組合に支払うべき費用を所定の支払期日までに支払わないときは、管理組合は当該区分所有者に対し、違約金としての弁護士費用を加算して請求することができる」旨の定めは合理的であり、違約金としての弁護士費用は、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されると判示。
●
原判決:違約金としての性格を論じることなく、弁護士費用が確定金額ではないことから、実費相当額ではなく、当該事案につき請求等に要する裁判所の認定する相当額⇒本件訴訟で請求されている管理費等学、被告の対応、その他本件における諸般の事情を総合考慮して50万円。
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本判決:違約金の性格は違約罰(制裁金)と解した上、弁護士費用は管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用であり、実費相当額の102万円余とした。
違約者に過度な負担を強いることになり不合理である旨主張に対しては、そのような事態は、自らの不払い等に起因するものであり、自ら回避することができるものであるから、各別不合理なものではないと応答。
違約罰(制裁j金)と性格決定をしたとしても、過大請求が制裁されるべきことは一般法理であり、本判決は、102万円余りという額が不合理ではないと判断。
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学説:標準管理規約にいう違約金としての弁護士費用の性格は、規定の定め方から、債務不履行による損害賠償(遅延損害金)とは別途に請求することのできる制裁金と解する見解。
判例時報2226
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