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2014年9月20日 (土)

出会い系サイト規制法の罰則を伴う届出制度と憲法21条1項

最高裁H26.1.16   

インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律7条1項、32条1号所定の罰則を伴う届出制度と憲法21条1項 

<事案>
自宅に設置したサーバコンピュータを利用して、電子掲示板を含むウェブサイトを管理・運営していた被告人が、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(「本法」)所定の都道府県公安委員会への届出をしないでインターネット異性紹介事業を行ったとして、本法違反の罪で起訴。 

弁護人らは、本件届出制度の憲法21条1項違反を主張。

<規定>
憲法 第21条〔集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密〕
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

<解説>

ウェブサイトにおける表現(文言、画像、それらの組合せ等)、ウェブサイトの開設・運営や、電子掲示板の利用等は同項の表現の自由の保障を受ける。

憲法上の結社に該当する集団による活動(メンバー間での連絡、議論や、対外的な意見表明等)がインターネットを利用して行われる場合に、それが結社の自由の保障を受けること自体は、肯定すべき。


合憲性審査の手法は、近年の多くの最高裁判例と同様に、一定の利益を確保しようとうする目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質これらに加えられる具体的制限の態様及び程度等具体的に比較衡量するという「利益衡量」の手法によったもの。

①「インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資する」という本法の目的について、思慮分別が一般に未熟である児童をこのような犯罪から保護し、その健全な育成を図ることは、社会にとって重要な利益⇒正当。

同事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪が多発している状況があるという立法事実を踏まえ、それら犯罪から児童を保護するために、同事業について規制を必要とする程度が高いこと、本法において届出を義務付けている事項を事業者自身からの届出により事業開始段階で把握することは、都道府県公安委員会による監督等の本法所定の権限を適切かつ実効的に行使し、ひいては本法の目的を達成することに資する。

③制限される自由や制限の態様等について、届出事項の内容は限定されたものであり、届出自体により、事業者によるウェブサイトへの記載や事業利用者による書き込みの内容が制約されるものではない

⇒本件届出制度は、正当な立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものというべきであって、憲法21条1項に違反するものではない。 


基本的人権を規制する法令の規定等の合憲性審査については、最高裁判例には、利益衡量の際の判断指標として、事案に応じて一定の厳格な基準(明白かつ現在の危険の原則、不明確ゆえに無効の原則、必要最小限度の原則、LRAの原則など)ないしはその精神を併せ考慮したものがみられるとの指摘。

本判決は、これら厳格な基準を用いてはいないが、これは、児童を保護し、健全な育成を図るという重要な利益を確保しようとする目的のために制限が必要とされる程度が高いのにたいし、本件届出制度は、表現に含まれる情報の性質に着目した規制であるとはいえ、その制限は、事業者に届出義務を課すというものであって、表現行為そのものを制約するものではないことから、利益衡量の結果は明らか⇒その判断指標として厳格な基準を用いるまでもないと考えたためと思われる。

判例時報2225

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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