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2014年7月19日 (土)

預金口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知りながら、現金を払い戻す行為と詐欺罪・窃盗罪(肯定)

東京高裁H25.9.4   

被告人が代表者である株式会社名義の預金口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知りながら、被告人が現金を払い戻す行為については詐欺罪が、現金自動払機から現金を引き出す行為については窃盗罪が成立するとされた事例 

<事案>
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、
①X銀行及びY銀行にそれぞれ開設されたA社(代表者は被告人)名義の普通預金口座に詐欺等の犯罪行為により現金が振り込まれているのに乗じて、預金払戻しの目的で、払戻請求書と同口座の預金通帳を提出して払戻しを請求する方法により、X銀行及びY銀行の各行員から、現金合計900万円をだまし取った2件の詐欺の事件、
②上記Y銀行の口座への入金が詐欺等の犯罪行為により振込入金されたものであることを知りながら、Y銀行に設置された現金自動預払機にキャッシュカードを挿入して、現金99万9000円を引き出して盗んだ窃盗の事案。

<主張>
詐欺及び窃盗の故意や共謀がなかった旨主張。 

<判断>

警察の要請を受けて預金口座を凍結した旨の説明を受ければ、預金口座が犯罪行為に利用されている可能性があるとの説明まで受けなくても、警察からの要請は、当該預金口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを警察において把握したためであることは容易に理解できる
⇒口座凍結の説明を受けただけでは、被告人が、直ちに、預金口座が犯罪行為に利用されている可能性が非常に高いことを理解・認識できたことにはならない旨の弁護人の主張を排斥。


A社の預金口座への振込金が詐欺等の被害者によって振り込まれたものであっても、A社は、銀行に対し、普通預金契約に基づき振込金額相当の普通預金債権を取得することになる(最高裁H8.4.26)。

①銀行が犯罪利用預金口座等である疑いがある預金口座について口座凍結等の措置をとることは、普通預金規定に基づく取扱いであるとともに、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(「救済法」)の規定するところ⇒銀行としても、このような口座については当然口座凍結措置をとることになる。

詐欺等の犯罪行為に利用されている口座の預金債権は、銀行がその事実を知れば口座凍結措置により払戻しを受けることができなくなる性質のものであり、その範囲で権利の行使に制約があるといえる。

普通預金規定上、預金契約者は、自己の口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知った場合には、銀行に口座凍結等の措置を講じる機会を与えるため、その旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があり、そのような事実を秘して払戻しを受ける権限はない。

本件各犯行の時点でA社名義の預金口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知っていた被告人には、本件預金の払戻しを受ける正当な権限はない

<解説>
誤振込みの事案に係る最高裁H15.3.12:
受取人においても、技能との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、誤った振込みがることを知った場合には、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。

誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たる。

民事判例の最高裁H20.10.10:
受取人の普通預金口座への振込みを依頼した振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合において、受取人が当該振込みに係る預金の払戻しを請求することについては、払戻しを受けることが当該振込みに係る金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合であるなど、これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるときには、権利の濫用に当たる。

判例時報2218

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