タクシー増車の認可申請を新規の輸送需要が見込まれないこと等を理由に却下した運輸支局長の処分の違法性(否定)
東京高裁H26.1.23
タクシー増車の認可申請を、新規の輸送需要が見込まれないこと等を理由に却下した運輸支局長の処分が、違法ではないとされた事例
<事案>
東京23区等でタクシー事業を営むXが、東京運輸支局長(処分行政庁)に対し、一般車両タクシーを30台増車するため、平成23年6月30日付けで事業計画変更許可申請⇒同年11月30日付けでこれを却下する旨の処分⇒国(Y)に対し、本件却下処分の取消し、認可処分をすることの義務付け等を求めた事案。
<解説>
平成22年の改正による規制緩和⇒免許制から許可制に移行し、増車は届出により可能。
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安易な増車による労働条件の悪化等により、輸送の安全や旅客の利便の確保が困難となるとの懸念。
⇒
平成21年に成立した「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(特措法)は、国交大臣が供給過剰等の状況に照らして指定した「特定地域」内(東京23区が含まれる)では、タクシーの増車に届出ではなく認可を受けることが必要。
認可基準は、道路運送法6条の規定が準用されているが、これを具体化した関東運輸局長ほか公示は、増車車両分の営業収入が、その営業区域で増車実施後に「新たに発生する輸送需要によるもの」であることを求めた(収支計画要件)。
<1審>
Xの増車申請が収支計画要件を満たしている⇒行政庁が増車認可申請を一切不認可とした点で、裁量権の逸脱又は濫用があり、本件却下処分は違法。
義務付けの訴えについては、30台分の営業収入が新たに発生する輸送需要によるか否かの判断は、処分行政庁による専門的・技術的な知識経験に基づく判断が必要⇒請求を棄却。
<判断>
Xの増車申請が収支計画要件を満たしていない⇒本件却下処分は適用⇒原判決を変更し、本件却下処分の取消請求を棄却(義務付けの訴えは不適法であるとして却下)。
平成23年11月の本件却下処分時において、近い将来、ビジネスジェット推進策により、東京23区等において、新規のタクシー輸送需要が発生するとは認められない。
⇒Xの増車申請は収支計画要件を満たしておらず、他に、増車しても供給過剰状態の更なる悪化につながらないとの特別な事情も認められず、本件却下処分には、裁量権を逸脱・濫用した違法があるとは認められない。
特措法は、特定の事業者に着目したものではなく、増車により特定地域の供給過剰状態の更なる悪化につながる場合には、優良事業者であっても認可されないことを予定している。
特措法は、新規の輸送需要が認められる場合には、一律に増車を禁止するものではなく、従前の需給調整とは異なる。
<解説>
1審と控訴審で判断が分かれたのは、法律の解釈ではなく、事実認定によるもの。
Yは、控訴審において、ビジネスジェットの発着回数の推移や、他のタクシー会社のサービス内容などについて、事実や資料を提出して相当の主張立証を行った。
判例時報2220
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