少年事件について送致が許されない事実(罰金以下の刑の事実)に変更しての公訴提起(否定)
最高裁H26.1.20
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件をそれと事実の同一性が認められる罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することの許否
<事案>
当時少年の被告人について、家庭裁判所が、無免許運転、及び故意による通行禁止違反という、併合罪の関係にある道交法違反の事件として検察官送致。
⇒
検察官が、故意による通行禁止違反の事実を、少年法20条1項による検察官送致が許されない過失による通行禁止違反の事実に認定替えし、前記無免許運転の事実と併せて公訴提起及び略式命令請求をし、公訴事実どおり有罪認定。
⇒
非常上告申立て。
<規定>
少年法 第20条(検察官への送致)
家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
<問題点>
少年法20条1項は、少年の保護事件につき家庭裁判所が検察官送致することができる事件を禁錮以上の刑に当たる罪に限定。
⇒
少年につき禁固以上の刑に当たる罪として検察官送致を受けた事件を、検察官が、それと事実の同一性が認められる、罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することができるか。
<判断>
少年法20条1項の趣旨に照らし、このような公訴提起は許されなかったものと解するほかはない。
⇒
略式命令請求を受けた簡易裁判所は、過失による通行禁止違反の事実につき公訴棄却の判決をすべきであり、これをしなかった原略式命令は、法令に違反し、かつ、被告人のために不利益であるとし、原略式命令を破棄し、過失により通行禁止場所を通行したとの事実につき公訴を棄却するとともに、無免許運転の事件につき、改めて罰金刑を言い渡した。
<解説>
検察官が送致を受けた事件について公訴を提起する場合、家庭裁判所の送致罪名、罰条に拘束されるか?
学説:
公訴を提起する事件は、家庭裁判所から送致を受けた事件であり、両者の間には同一性がなければならないが、送致された事件について、訴因・罰条が明示されていても、必ずしもそれに拘束される必要はない。検察官の捜査中同一性を失った時は更に家庭裁判所に送致しなければならない。」
罰金以下の刑に当たる罪を犯した少年の事件において、家庭裁判所を経由することすらなく確定した略式命令に対する非常上告を容れた最高裁昭和42.6.20。
家庭裁判所が少年法20条の規定に違反して検察官送致をし、そのまま略式命令請求等がされ、確定した略式命令に対する非常上告を容れた最高裁H4.9.8。
判例時報2215
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