原判決中未決勾留日数参入部分が破棄された事例
最高裁H25.11.19
原判決中未決勾留日数参入部分が破棄された事例(①・②事件)
<事案>
共犯者4名が共謀の上、営利目的で覚せい剤を所持するなどしたという事案。
<規定>
刑訴法 第182条〔共犯人の連帯負担〕
共犯の訴訟費用は、共犯人に、連帯して、これを負担させることができる。
刑訴法 第495条〔未決勾留日数の法定通算〕
上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。
刑法 第21条(未決勾留日数の本刑算入)
未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
<1審>
4名が共同被告人として審理を受けた第1審では、故意や共謀が争われたが、第1審判決は4名を有罪とするとともに、訴訟費用を4名の連帯責任とした。
vs.
この訴訟費用には、被告人3名の被疑者段階の国選弁護人に関する費用が含まれており、これは本来他の共同被告人には負担させられないもの。
⇒4名全員が控訴。
<2審>
全員を分離して審理。
被告人A、Bについて、上記の連帯負担の点が刑訴法182条に違反
⇒第1審判決のうち訴訟費用負担部分を破棄し、その余の控訴を棄却。
刑法21条を適用して原審における未決勾留日数の裁定参入を行った。
⇒
被告人A、Bが上告。
<判断>
原判決中「当審における未決拘留日数中80日を原判決の懲役刑に算入する。」との部分を破棄する。
その余の部分に対する本件上告を棄却する。
<解説>
第1審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は、刑訴法495条2項2号により、判決が確定して執行がされる際当然に全部本刑に通算されるべきものであって、控訴裁判所には、上記日数を本刑に通算するか否かの裁量権が与えられていない。
⇒刑法21条により判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきでない(判例)。
判例時報2216
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