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2014年5月 1日 (木)

一般廃棄物収集運搬業の許可申請に対する不許可処分について、手続的側面の違法から取消した事例

福岡地裁H25.3.5   

廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条1項に基づく浄化槽汚泥の収集運搬業の許可申請に対する不許可処分が、一般廃棄物処理計画との適合性を審査していないなどの違法があるとして取り消された事例 

<事案>
Xが、町長に対し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(「廃棄物処理法」)7条1項に基づき、浄化槽汚泥の収集運搬業の許可申請を行ったところ、不許可処分を受けた。
⇒Yを相手に、その取消しを求めた。 

<規定>
行政手続法 第8条(理由の提示)
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

<争点>
①川崎町生活排水処理計画の違法性
②一般廃棄物処理計画との適合性を審査していない違法
③考慮不尽等による裁量権打つ脱の違法
④一般廃棄物処理契約を告示その他の方法により公表しなかったことによる違法
⑤理由提示の違法性

<解説・判断>   
争点②④⑤の点について違法であると判断し、Xの請求を認容。

●争点②(一般廃棄物処理計画との適合性を審査していない違法)について 
廃棄物処理法7条5項は、「市町村長は、第1項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。」と定め、同項2号は、「その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。」を申請に対する許可の要件として定めている。

同号の適合性判断に関しては、既存の許可業者によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきており、これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されているような場合には、市町村長は、それ以外の者からの一般廃棄物収集運搬業の許可申請について審査するに当たり、一般廃棄物の適正な処理を継続的かつ安定的に実施するためには、既存の許可業者のみに引き続きこれを行わせることが相当であるとは認められないとして不許可とすることができる。(最高裁H16.1.15、同H26.1.28)
but
このような理由出不許可処分をする場合であっても、手続的には、一般廃棄物処理計画との適合性を審査することが当然の前提とされている。

当該申請に対して、一般廃棄物処理計画との適合性を何ら審査することなく、同号を理由に不許可処分を行うことは許されない。

同条1項に基づく許可は、一般に、事業の範囲(取り扱う一般廃棄物の種類(例えば、ごみ、し尿))を定めて与えるものとされている
⇒同条5項2号の適合性を判断するに当たっては、当該事業の範囲に対応した形で一般廃棄物処理計画との適合性を審査する必要。

本判決:
本件不許可処分の通知書及び決裁文書の記載内容や、Yが策定した一般廃棄物処理計画の内容から、Xからの申請に対して当該事業の範囲に対応した形で一般廃棄物処理計画の適合性を審査していない旨判断⇒同号に違反する違法があると判断。

廃棄物処理法の前身である清掃法15条1項に関するものであるが、市長が許可申請がなされる以前の時点で既に新規業者は許可しないとの方針を定め、申請書記載事項について具体的な検討を加えることもないまま不許可にしたとして、裁量権行使の正当な範囲を逸脱した違法があると判断した事例(東京高裁昭和51.3.30)。

●争点④(一般廃棄物処理契約を告示その他の方法により公表しなかったことによる違法)について 
産業廃棄物処理法6条5項は、「市町村は、一般廃棄物処理計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。」と規定。

一般廃棄物処理計画が廃棄物に関係を有する廃棄物処理業者、市民等に広く周知すべきものであるから、市町村の公法への掲載や広報活動、関係団体への情報提供等により、公表・周知が行われなければならないことを定めたもの。

川崎町廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例5条5項は、「町長は、一般廃棄物処理計画を定めたとき、又は重要な変更をしたときは、これを告示するものとする。」と規定。
but
Yは、裁定した平成18年基本計画及び平成22年度実施計画を告示その他の方法により公表していなかった。

本判決:
一般廃棄物処理計画には「一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項」が定められ(同法6条2項4号)、同法7条1項の許可要件として「その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合すること」を要するから、公表義務の趣旨として、申請者において事前に許可を受ける見込みの有無等を検討するに当たり必要不可欠な情報を提供する趣旨があると解し、少なくとも、策定又は変更された一般廃棄物処理計画を告示その他の方法により公表していない状態で、同計画に適合しないことを理由になされた同項に基づく不許可処分は、同法6条5項及び同条例5条5項に違反し、取り消されるべきである。

●争点⑤(理由提示の違法性)について 
行政手続法8条1項本文は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」と定め、同条2項は、「前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」と規定。

書面により拒否処分の理由を提示する場合には、いかなる事実関係に基づいていかなる法規を適用して拒否処分がなされたかを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないと解されている(最高裁昭和60.1.22)。

本件不許可処分の通知書のように単に根拠条文を記載したのみでは、いかなる事実関係に基づいて同号に該当すると判断したのかが了知し得ず、同条1項本文の要求する理由定時としては不十分。

判例時報2213

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