未払下水道使用料納入通知処分及び過料処分が取り消された事例
さいたま地裁H25.9.25
行田市長がXらに対してした未払下水道使用料納付通知処分及び過料処分について、下水道使用料の算定方式が行田市下水道条例に反して違法であるとして、その全部が取り消された事例
<事案>
X1及びX2は、いわゆるスーパー銭湯(入浴料金が物価統制令に基づく統制額として埼玉県の指定した額の適用を受けていない公衆浴場のことをいう。)である本件施設を運営していたところ、本件施設には温泉水及び井戸水を汲み上げるための揚水管にそれぞれ本管とは別に迂回配管が存在していたが、迂回配管を通過した水量については計測されていなかった。
⇒
行田市長は、X1及びX2に対し、条例に規定のないヘーゼン・ウィリアムスの公式を用いて算出した汚水排除量に「一般汚水」の算定基準を乗じた額に100分の105を乗じて下水道使用料を算定し、そこから既払下水道使用料を控除した額の支払を求める通知処分をし、また、X2に対し、未払下水道使用料の2倍に相当する額の過料処分をした。
⇒
X1及びX2が、本件各処分は、下水道使用料の算定方法が行田市条例に違反して違法である等として、その取消しを求めた。
<判断>
●
汚水排除量の算定方法を定めた「それ(計測装置)がないとき」(行田市条例17条1項2号)とは、計測装置を設置していたとしても、故障等何らかの事情で揚水量の「すべてを正確に測定できなかった場合も含むと解釈すべき。
本件では、本管には計測装置があるが、迂回配管に計測装置がなく計測装置により湯水量の全てを正確に計測することができなかった。
⇒「それ(計測装置)がないとき」にあたり同条例別表第2に定める基準で算定されるべき。
●
汚水排除量の算定基準の規定は、下水道使用料の性質にかんがみて、その文言から一義的に導ける範囲で解釈されるべきと解される。
「浴場汚水」は同条例で「公衆浴場法(昭和23年法律第139号)の規定による浴場から排除される汚水」と明確に定義
⇒
「公衆浴場汚水」とは特段の限定を加えることなく「温泉、潮場又は温泉その他を利用して、公衆を入浴させる施設(公衆浴場法1条1項)から排出される汚水」を指すと解するほかない。
⇒
本件施設から排出される汚水には「浴場汚水」の算定基準を適用するのが相当。
●
結論として、
①行田市長による下水道使用料の算定方法を違法とし、
②前記の正しい算定方法による算定した場合にXらが支払うべき下水道使用料が既払下水道使用料を超えることの証明はない。
⇒
本件各処分の全部を違法としてXらの請求を全部認容。
判例時報2214
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