弁護人の死刑確定者との立会いのない面会拒否が国賠法上違法となる場合
最高裁H25.12.10
死刑確定者又はその再審請求のために選任された弁護人が再審請求に向けた打合せをするために刑事施設の職員の立会いのない面会の申出をした場合にこれを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合
<規定>
刑訴法 第39条〔被疑者・被告人との接見・授受〕
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
②前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
③検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
刑訴法 第440条〔弁護人の選任〕
検察官以外の者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。
②前項の規定による弁護人の選任は、再審の判決があるまでその効力を有する。
憲法 第34条〔抑留・拘禁に対する保障〕
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
刑事収容施設法 第121条(面会の立会い等)
刑事施設の長は、その指名する職員に、死刑確定者の面会に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、この限りでない。
<判断>
死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく、再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして、国賠法1条1項の適用上違法となる。
<解説>
死刑確定者の秘密面会の利益について、刑訴法39条の準用の有無の見解が分かれる。
死刑確定者が再審請求をするためには、再審請求弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障する必要がある。
⇒死刑確定者には秘密面会の利益が認められると判示。
~
憲法34条の弁護人依頼権が弁護人との接見交通権を保障する趣旨を含むとことと同様に、刑訴法440条の弁護人依頼権も弁護人との秘密面会を保障する趣旨を含むと解したもの。
本判決:
秘密面会の利益が保護されることは、死刑確定者の弁護人による弁護権の行使においても重要なものであるのみならず、刑訴法39条1項によって保障される秘密交通権が弁護人にとってはその固有権の重要なものの1つであるとされていることも踏まえれば(最高裁昭和53.7.10)、秘密面会の利益も、再審請求弁護人からいえばその固有の利益であると判示。
本判決:
死刑確定者の秘密面会の利益が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条ただし書にいう「正当な利益」に該当。
but
再審請求弁護人の秘密面会の利益は右「正当な利益」に該当するとはしていない。
←
同条はあくまで死刑確定者の利益と刑事施設の規律等の確保等との調整を図る規定であって、必ずしも再審請求弁護人の秘密面会の利益までをも直接規律の対象とするものとはいえないと解した。
⇒
刑事施設の長が再審請求弁護人固有の秘密面会の利益を配慮すべき義務は、刑事収容施設法の「第2編第2章第11節第2款」の面会に関する規定全体の趣旨から導かれるという理解に立つものと思われる。
判例時報2211
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