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2014年4月17日 (木)

金融商品取引法に基づく外務員登録取消処分の取消しの訴えと(処分の名宛人でない)当該外務員の原告適格(肯定)

東京地裁H25.2.19   

1.金融商品取引法に基づく外務員登録取消処分の取消しの訴えについて、当該外務員に原告適格が認められた事例
2.証券会社の外務員であった者が、同社の顧客が転換社債発行に係る臨時報告書等を提出するに当たって、重要な事項を開示しないよう働きかけたことを理由にされた外務員登録取消処分が適法とされた事例 

<事案>
被告(日本証券業協会)は、金商法64条の7に基づき内閣総理大臣から外務員の登録に関する事務の委任を受けた認可金融商品取引業協会であるところ、原告らがアーバン社に対してスワップ契約に関する情報を開示しないよう働きかけたことが「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」に該当するなどとして、BNPパリバ社に対し、同法64条の5第1項2号に基づき、原告らの外務員登録を取り消す目畝の各処分をするとともに、被告の内部規則である「協会員の従業員に関する規則」12条1項に基づき、原告らを不都合行為者と取り扱う旨の決定。

原告らが、外務員登録取消処分の取消し等及び損害賠償を求めた事案。 

<規定>
行政事件訴訟法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

<争点>
①外務員である原告らに外務員登録取消処分の取消訴訟における原告適格があるか。
②原告らに同処分の処分事由があるか。

<判断>

行訴法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、当該処分を定めた行政法規が、不特定j多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害された者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するというべき。 

本件登録取消処分の名宛人は、登録された外務員である原告らではなく、原告らが所属していた金融商品取引業者であるBNPパリバ社

金商法に規定する外務員登録制度及び同取消制度の目的及び趣旨からすれば、これらの制度が外務員個人の個別的利益を保護するものと直ちに解するのは困難。
but
金商法上、外務員登録を取り消された者は、取消の日から5年間にわたって外務員の登録を受けることができず、その結果、同期間、金融商品取引業に一切従事することができないとうい不利益を受けることが予定されている。

金商法は、外務員が違法に外務員登録を取り消されないという利益についても法律上保護しているものと解するのが相当

原告らに本件登録取消処分の取消訴訟における原告適格を肯定


アーバン社が提出した本件臨時報告書等は、「重要な事項につき虚偽の記載がある」もの(旧金商法172条の2、197条の2等)に該当し、原告らが本件スワップ契約を開示しないよう働きかけた行為は、金融商品取引業者及びその外務員、ひいては証券市場全体に対する一般投資家の信頼を損なうものであるとともに、国民経済の健全な発展及び投資者の保護(金商法1条)に資するように行動する外務員の責務に照らして著しく不適当なもの

上記行為は「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(同法64条の5第1項2号)に該当し、本件登録取消処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるとも認められない。 

判例時報2211

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