公益法人に対する株式の寄附について譲渡所得の非課税が否定された事例
東京地裁H25.9.12
公益法人に対する株式の寄附について租税特別措置法(平成20年法律第23号による改正前のもの)40条1項後段の規定による譲渡所得の非課税の承認申請を不承認とする国税庁長官の処分が適法であるとされた事例
<事案>
Xが、公益財団法人に対してして株式会社の発行する株式の寄附は公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の贈与に当たるとして、租税特別措置法40条1項後段の規定による譲渡所得の非課税の承認申請⇒国税庁長官が本件承認を不承認とする処分⇒本件処分の取消しを求めた事案
<制度>
法人に対する贈与により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その贈与をした時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなされ、当該贈与者に対し所得税が課税される(所得税法59条1項1号)。
民法34条(平成18年法律第50号による改正前のもの)の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人に対する財産の贈与で当該贈与が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについては、所得税の課税においては当該財産の贈与がなかったものとみなされる(措置法40条1項)。
<争点>
本件申請を承認しなかった本件処分の違法性の有無であり、
当事者間においては、
①公益増進に関する要件該当性
②事業供用に関する要件該当性
③手続的違法の有無
<判断>
本件処分は適法。
公益財団法人への株式の寄附がされてから2年以内にされた同株式に係る配当金が合計2750万円であったのに対し、同公益財団法人がその期間内に助成金として支給したのは合計1928万3200円にすぎず、その支給割合が約70%にすぎない。
⇒
寄付された株式に係る配当金が2年以内に全額助成金として支給されているということはできない。
⇒
同株式が同公益財団法人の公益事業の用に直接供されたとはいえない。
贈与者であるXが単に事業供用に関する要件を知らなかったとの事情をもって、「やむを得ない事情」があるとはいえない。
判例時報2210
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