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2014年3月17日 (月)

鉄道事業法に基づく旅客運賃認可処分の取消しの訴え等の原告適格

お東京地裁H25.3.26

居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者は、鉄道事業法に基づく旅客運賃認可処分の取消しの訴え等の原告適格を有するとされた事例

<事案>
国土交通大臣は、鉄道事業法15条1項に基づき、北総鉄道及び千葉ニュータウン鉄道が京成電鉄との間で上記鉄道路線の使用について設定した各使用条件(線路使用料や旅客運賃収入の配分方法等を定めたもの)を認可する旨の各処分(本件各線路使用条件認可処分)をするとともに、同法16条1項に基づき、京成電鉄の申請に係る成田空港線の旅客運賃上限の設定を認可する旨の処分(京成運賃上限認可処分)をした。 

<請求> 
上記使用条件は、北総鉄道のみに不利益なもので、北総鉄道及びその利用者の利益を著しく害するものであり、「鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれ」がある⇒
本件各線路使用条件認可処分は、鉄道事業法15条3項に規定する認可要件に違反する違法なもの

同処分の取消を求める(請求①②)とともに、
国土交通大臣が同法23条1項4号に基づき上記使用条件を変更するよう命じることの義務付けを求めた(請求③)。 

①北総鉄道の旅客運賃は、距離と運賃が比例しておらず近距離の旅客運賃が異常に高くなっており、「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものである」ことや、「能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ、適正な利潤を含むもの」ではない⇒北総運賃変更認可処分は、鉄道事業法16条2項に規定する認可要件に違反する違法なもの
②北総鉄道に適正な線路使用料が支払われるべきことからすれば、同処分は、後発的に、同項に規定する適正原価・適正利潤の原則に違反する違法なものとなった
③これらの違法は重大かつ明白

主位的に同処分の無効確認を求め(請求④)
予備的に同処分の取消しを求める(請求⑤)とともに、
国土交通大臣が鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基づき北総鉄道に対して旅客運賃上限等を変更するよう命じることの義務付けを求めた(請求⑥)。

<規定>
行政事件訴訟法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

行政事件訴訟法 第37条の2(義務付けの訴えの要件等)
第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

<判断>

行訴法9条2項の
「当該法令の趣旨及び目的」について
旅客運賃認可処分の根拠法である鉄道事業法が、利用者の利益の保護を目的とし(1条)、旅客運賃等の設定に認可を要することとして(16条1項)、旅客運賃等に関して利用者の利益を具体的に保護しようとしていることに加え、同法の関係法令が鉄道の利用者に一定の手続関与の機会を付与していることを指摘

「当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質」について
違法に高額な旅客運賃が設定された場合・・・・仕事や居住場所などといった日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害が生じかねない。
少なくとも居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者が有する利益は「法律上保護された利益」に該当
⇒旅客運賃認可処分の取消し等の訴え等について原告適格を有するとして、北総運賃変更許可処分の取消し又は無効確認の訴え(請求④⑤)及び旅客運賃変更命令等の義務付けの訴え(請求⑥)について、原告適格を肯定。


鉄道事業法15条1項に基づく線路使用条件設定認可処分によって、鉄道利用者が「法律上保護された利益」を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあるとは認められない
⇒請求①②③については、原告適格を否定。


北総鉄道に対する旅客運賃変更命令等の義務付けの訴え(請求⑥)に関し、「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の2第1項)があるとし、北総運賃変更認可処分の取消しの訴え(請求④)は、出訴期間を徒過している。 

判例時報2209

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