青色申告更正処分に付記された理由の不備(肯定)
大阪高裁H25.1.18
青色申告更正処分に付記された理由が法人税法130条の求める理由付記として不備があるとして更正処分が取り消された事例
<事案>
財団法人であるXが、処分行政庁から法人税についての青色申告更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことに対し、同各処分が違法であると主張して、同更正処分のうち申告額を超える部分及び同賦課決定処分の取消しを求めた事案。
<判断>
本件各更正処分は、青色申告に係る法人税について、帳簿書類の記載を否認することなく、対象となった本件各事業が収益事業に該当するという法的評価により更正処分をしたもの。
その場合、更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を適示することは要しないが、更正の根拠を、更正処分庁の恣意的抑制及び不服申立の便宜という理由付記制度の制度目的を充足する程度に具体的に明示するものであることを要する。
⇒
更正処分庁が当該評価判断に至った過程を検証しうる程度に記載する必要がある。(最高裁昭和60.4.23)
本件各付記理由は、Xの行う本件各事業が収益事業に該当するとの判断をするにあたって必要となるべき、法人税法施行令5条1項10号、同法施行規則4条の3、同法基本通達15-1-28(いわゆる実費弁済通達)の各規定や、その適用関係についての判断過程の記載が一切なく、本件各付記理由の記載自体からは、処分行政庁が本件各更正処分をするに当たり、これら法令等の適用関係や判断過程、特に本件各事業が実費弁償(その委託により委託者から受ける金額が当該業務のために必要な費用を超えないことをいう。)により行われているといえるのか、実費弁償通達が適用されるのかとうい点についての判断過程を検証することができない。
⇒本件各付記理由は法人税法130条の求める理由付記として不備があるものといわざるを得ないとして、原判決を取消した上、Xの請求をいずれも認容。
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