仕組債の購入と説明義務違反(肯定)
京都地裁H25.3.28
証券会社から仕組債を購入し、損害を被った顧客が証券会社に対し、右取引には証券会社の仕組責任、適合性違反、説明義務違反があるとして求めた損害賠償が、一部の取引について説明義務違反を認められにんようされた事例(過失相殺5割)
<事案>
平成16年4月15日、米国の自動車会社の社債を100万米ドルで購入(取引①)
同年9月16日、仕組債を50万米ドルで購入(取引②)
平成18年2月16日、仕組債を50万米ドルで購入(取引③)
で、7000万円を超える損失を計上。
<主張>
取引②及び③の各仕組債については、本来、リスクとリターンの非対称性、参照金利の予測の困難性、損失の回避可能性の欠如、経済的有用性の欠如を理由に組成、販売すべきでない商品を組成、販売したとして仕組責任違反があった。
本件全取引について、適合性違反、勧誘の過程ないし販売後における説明義務違反があった。
⇒取引による損失額と弁護士費用の賠償を求める本訴を提起。
<判断>
契約内容等を検討したうえで、取引②③に係る仕組債を組成、販売したことが許されないことであったとはいえない⇒排斥。
豊富な投資経験を有しており、日々の生活のための資金以外にも相当程度の資産を有していた⇒本件各取引の契約内容から、YがXに対して本件各取引の商品の購入を勧誘したことが適合性原則から著しく逸脱していたということはできない。
説明義務違反について、証券会社及びその従業員は、一般投資家に対し、同人が自主的な判断に基づいて当該取引を行うか否かを判断する前提として、その年齢、知識、投資経験、投資傾向及び理解力等その属性に応じて、当該金融商品取引の内容、仕組み及び取引に伴うリスクの内容とその仕組みについて説明すべき信義則上の義務を負担している。
本件取引①及び②については、事後的な説明義務を否定し、Xの投資経験等に照らしてYの行った説明で足りる。
本件取引③にについては、参照対象株式が10銘柄であるため10の株価の推移を同時に見極めなければならず、想定元本が発行価額の10倍であるため元本を毀損するリスクも10倍になることが簡単には理解しがたく、リスクが個々の参照対象株式のボラリティに大きく依存するものの、Yの従業員は個々の株式銘柄の株価のボラリティをXに説明していない。
⇒YはXに元本が毀損するリスクの程度につき誤解を生じさせるような説明しかしていないとして説明義務違反を認めた(過失相殺5割)。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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