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2014年1月 8日 (水)

破産者による納税保証と無償行為否認(肯定)

東京高裁H25.7.18    

1.破産者による納税保証が破産法160条3項所定の無償行為に当たるとして破産管財人の否認権行使が認められた事例
2.附帯請求である法人税還付金に対する還付加算金の算定方法
3.破産者が子会社の滞納国税を納付したとの主張が認められず、破産管財人の破産法160条3項の否認権行使が認められなかった事例 

<事案>
破産者Aの破産管財人であるXが、Y(国)に対し、
(1)Aが子会社Bの滞納国税(法人税)について納税保証(本件納税保証)をし、Z(処分行政庁)がXの有する国税(法人税)還付金7億2094万8970円につき本件納税保証に基づく国税債務に対当額で充当する旨の処分(本件充当処分)をした

Xが本件納税保証を破産法160条3項に基づいて否認し、これによって本件納税保証が無効になったと主張。
(ア)本件充当処分の取消し
(イ)同処分により充当されたXの上記国税還付金の還付又は同還付金相当額の不当利得金の返還を選択的に請求

(2) Aの子会社Cの滞納国税3億2907万1000円の納付(本件納付)をしたのはAであり、Xがこの納付を破産法160条3項に基づいて否認したと主張
⇒上記納付に係る滞納国税相当額の返還を請求

<規定>
破産法 第160条(破産債権者を害する行為の否認) 
3 破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
 
<判断>

(1)の還付金請求においては、本件納税保証が、「無償行為及びこれと同視すべき有償行為」を対象とする破産法160条3項の否認権行使における①無償性及び②有害性の要件の具備: 

無償性について:

(ア)AとBとの間の保証委託契約の締結及びBの保証料の支払が証拠上認められない(仮にAが保証料率0.1%の保証料債権を有するとしても、Bが弁済できる見込みは全くないから経済的対価とは認められない。)

(イ)Yが挙げるBからの債権回収及び金融機関からの融資の点も、既にAとBとの金融業務の分担等による経済的依存関係の基礎が失われており、当面の滞納処分の回避と債権回収はAの責任財産を増加又は維持するものではなく、金融機関からの融資も実現可能性が乏しい上、Aの積極財産を増加させるものではなく経済的利益とはいえない
⇒無償性を肯定。

有害性について:
本件納税保証は、国税債権者に対し、自力執行権(国税通則法52条4項の滞納処分を執行できる地位)及び優先徴収権(破産法43条2項の破産手続開始決定前に着手された滞納処分の続行による権利行使)などが付与された租税債権を取得させ、Aの一般債権者よりも優先的な地位に立たせることになる
⇒有害性を肯定


(2)の返還請求について、
本件納付の納付書にCの名称のみが記載⇒本件納付の原資をAが支出したか否かにかかわらず、Aが第三者納付をしたとは認められず、Cが納付したと推認
⇒Aの第三者納付を否定し、Xの否認権行使を否定。
 
<解説>
最高裁昭和62.7.3:
破産者が義務なくして他人のためにした保証又は担保の供与は、債権者の主債務者に対する出損の直接的な原因となる場合であっても、破産者がその行為の対価としての経済的利益を受けない限り、旧破産法72条5号にいう無償行為に当たるとし、行為の無償性は専ら破産者について決すべきであり、求償権の存在は当然には行為の対価としての経済的利益に当たらない旨判示

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