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2014年1月 7日 (火)

マンション建築による風害を理由とした損害賠償請求等(否定)

大阪地裁H24.10.9   

マンションの建築による風害を理由とした損害賠償請求等が棄却された事例

<事案>
X1の店舗の南側に、Y1が11階建て(高さの最高が33メートル)のマンションを建築したことにより、風環境が悪化し、X1及びX2(X1の代表取締役)は受忍限度を超える被害を被ったなどと主張し、
①X2において、Y1及びY2(マンションの管理組合)に対し、人格権に基づき、所定箇所に暴風フェンスを設置することを求めるとともに、民法709(Y1に対して)ないし民法717条1項(Y2に対して)に基づき、損害金の支払を求めたほか、訴状送達の日の翌日から前記フェンス設置するまでの間の将来発生する損害金の支払を求め、
②X1において、Yらに対し、民法709条(Y1に対して)ないし民法717条1項(Y2に対して)に基づき、損害金の支払を求めたほか、訴状送達の日の翌日から前記フェンスを設置するまでの間の将来発生する損害金の支払を求めた事案。 

<規定>
民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
 
<判断>
マンション建設により風環境が悪化しXらの受忍限度を超えた被害が発生したことを認めるに足りる証拠がなく、仮に、マンション建築によりXらの受忍限度を超えた被害が発生したとしても、Y1においてこの点に過失がない。
⇒棄却。 

<解説>
大阪高裁H15.10.28(マンション建築による風害が問題となった事案で慰謝料請求等を認容した事案)
①マンション敷地内2か所に設置された風速・風向計により、着工前から竣工後まで風速等を計測し続けていた⇒その測定結果によって風環境の悪化を明らかにすることができた上、その悪化の程度も著しかった。
②被告らにおいて風害が生じた場合について因果関係の立証責任を負担

受忍限度を超えた風環境の悪化の認定につながったものと推察。

本件では、マンション建築後の風環境の悪化による受忍限度を超えた被害の発生を立証することは困難。

マンション建築により風環境が悪化したとしても、その主な原因は、マンションの敷地に従前建てられていた建築物より、マンションが土地の境界から後退した箇所に建築されたことにあるものと推察され、マンションの高層性が直接の原因ではなかった。⇒Y1の過失を立証することも困難。

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