滞納者の持分に対する差押処分の取消訴訟と他の共有者の原告適格(肯定)
最高裁H25.7.12
滞納者と他の者との共有に係る不動産の滞納者の持分に対する差押処分の取消訴訟と他の共有者の原告適格
<事案>
選定者A及びXとBとの共有に係る不動産のBの持ち分につき、Bが滞納していた相続税を徴収するため国税徴収法47条1項に基づく差押処分がされた
⇒Xが、選定当事者として、上記処分の取消しを求めた事案。
<規定>
第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
<原審>
本件差押処分は本件各不動産のBの持分についてされたものであり、本件選定者らの持分についてされたものではなく、本件選定者らは本件差押処分の取消しを求める原告適格を有しない。
⇒取消しを求める訴えは不適法。
<判断>
滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者はその差押処分の取消訴訟の原告適格を有する⇒本件選定者らは本件差押処分の取消訴訟の原告適格を有する。
<解説>
●
取消訴訟の原告適格について定める行政事件訴訟法9条1項にいう「当該処分・・・の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(判例)。
処分の名宛人以外の者が処分の法的効果による権利の制限を受ける場合に当該処分の取消しを求める「法律上の利益」を有するか?
個別の各事件における原告が処分の法的効果による権利の制限を受ける者であると認められる場合に、その原告適格を肯定する判断。
●
①差押処分の処分禁止効により、滞納者の持分が差し押さえられた場合には当該不動産に係る用益権設定等の処分が禁止
⇒
滞納処分による差押登記後に当該不動産につき賃貸や地上権設定等をしてもこれを公売処分による当該持分の買受人に対抗することができない。
⇒
滞納者の持分と使用収益上の不可分一体をなす持分を有する他の共有者についても当該不動産に係る用益権設定等の処分が制約を受ける。
②同法69条1項ただし書、同条2項は、不動産の差押処分がされた場合について、滞納者及び「差し押さえられた不動産につき使用又は収益をする権利を有する第三者」に対し当該不動産の価値を著しく減耗させる使用又は収益の制限をすることができると規定。
滞納者以外の共有者は上記の第三者に当たる。
(滞納者の持分が差し押さえられた土地上に建物を新築するなどの行為に関しては、滞納者のみならず他の共有者についても上記の制限が及ぶ。)
⇒
差押処分の法的効果による権利の制限を受ける者といえ、差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たるとされた。
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