顧客によるダウンロードと「頒布」(刑法175条)
東京高裁H25.2.22
1.顧客らによるサーバーコンピュータからのダウンロード行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを同人らのパソコン等の記録媒体上に取得させる行為は、刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の「頒布」に該当するものとされた事例
2.日本国外でサイトが運営された場合であっても、日本国内における顧客のダウンロード行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを頒布したときは、刑法1条1項にいう国内犯として処罰することができるとされた事例
<事案>
不特定の顧客に対し、あらかじめアメリカ合衆国内に設置されたサーバコンピュータに記録、保存させたわいせつな動画等のデータファイルを、インターネット上の動画等配信サイトを利用してそのサーバコンピュータにアクセスした顧客らの日本国内に設置されたパソコンに記録、保存させて再生、閲覧可能な状況を設定させるなどした被告人が、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録を頒布したなどして起訴された事案
<規定>
刑法 第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
<判断>
顧客によるダウンロードは、被告人らサイト運営側に当初から計画されてインターネット上に組み込まれた、被告人らがわいせつな電磁的記録の送信を行うための手段にほかならず、この顧客によるダウンロードという行為を通じて同人らにわいせつな電磁的記録を取得させるものであって、その行為は「頒布」の一部を構成するものと評価することができる。
⇒
被告人は、刑法175条1項後段にいう「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録・・・を頒布した」というに妨げないものと判示。
犯罪構成要件に該当する事実の一部が日本国内で発生していれば、刑法1条にいう国内犯として同法を適用することができるものと解されるところ、被告人らは日本国内における顧客によるダウンロードという行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを頒布。
⇒刑法175条1項後段の実行行為の一部が日本国内で行われていることに帰する。
⇒被告人らの犯罪行為は、刑法1条1項にいう国内犯として処罰することができる。
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