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2013年10月 5日 (土)

刑訴法382条の事実誤認と経験則

最高裁H25.4.16   

覚せい剤を密輸入した事件について、被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第1審判決には事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用の誤りはないとされた事例 

<事案>
覚せい剤密輸事件について、第一審の無罪判決を刑訴法382条に定める事実誤認を理由に破棄した控訴審判決に対する被告人からの上告に対し、控訴審判決には同条の解釈適用の誤りはないとして上告棄却決定をした事案。 

<規定>
刑訴法 第382条〔同前-事実誤認〕
事実の誤認があつてその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき誤認があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

<判断>
覚せい剤を密輸入した事件について、被告人の故意を認めながら共謀を認めずに無罪とした第一審判決には事実誤認があるとした原判決は、被告人が、犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼され、その中に覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながらこれを引き受けたという本件事実関係の下では、特段の事情がない限り、覚せい剤輸入の故意だけでなく共謀をも認定するのが相当である旨を具体的に述べた上、本件では、特段の事情がなく、むしろ共謀を裏付ける事情があるとしており、第一審判決の事実認定が経験則に照らして不合理であることを具体的に示したものということができる。
⇒刑訴法382条の解釈適用の誤りはない。

<解説>
最高裁H24.2.13:
刑訴法382条の事実誤認とは、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることをいうものと解するのが相当であり、控訴審が第一審判決に事実誤認があるというためには、第一審判決の事実の認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要

経験則とは、「個別の経験から帰納的に得られた事物の性状や因果関係に関する知識や法則」などと定義される。

本決定は、共謀の認定に関し、覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながら貨物受取の依頼と引受けがされたという事実関係の下では特段の事情がない限り共謀が認められるという経験則の一事例を示すとともに、経験則違反を具体的に示したものとして是認される一事例を示すもの。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013kouhan.html

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