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2013年10月 6日 (日)

神奈川県臨時特例企業税条例事件上告審判決

最高裁H25.3.21   

資本金等が一定額以上の法人の事業活動に対し臨時特例企業税を課することを定める神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)の規定と地方税法72条の23第1項本文

<事案>
Xが、神奈川県臨時特例企業税条例に基づく道府県の法定外普通税である臨時特例企業税を課された
⇒本件条例は法人事業税の課税標準である所得の金額の計算につき欠損金の繰越控除を定めた地方税法の規定に違反し、違法、無効であると主張し、Y(神奈川県)に対し、納付した特例企業税合計19億7900万円余りの支払などを求めた事案。 

<判断>
憲法が、地方公共団体の課税権の具体的内容について規定しておらず、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は法律で定めるものとし、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるものとしていることなどに照らし、地方公共団体の課する租税の税目や課税標準等は、憲法上、法律においてその準則を定めることが予定されている
法律で準則が定められている場合には、地方公共団体の課税権はこれに従って行使されなければならない

地方税法が法定税の税目、課税標準とその算定方法、標準税率と制限税率等に関して詳細な定めを設けている。
地方税法の定める法定税についての規定は、これと異なる定めを許容する旨の別段の定めのあるものを除き強行規定と解される
これに反する租税条例の規定は違法、無効である。
 
地方公共団体の制定する租税条例の規定が地方税法の規定に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって判断しなければならない。
 
法人事業税の課税標準に関する規定(改正前地方税法72条の14第1項本文)が、法人事業税の課税標準の算定方法について、原則として当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例によって算定するものと規定し、条例等により欠損金の繰越控除の特例を設けることを容認する規定が存在しない

地方税法においても上記のような趣旨、目的から欠損金の繰越控除の必要的な適用が定められていたとして、たとえ欠損金額の一部についてであるとしても条例において欠損金の繰越控除を排除することは許されず仮にこのような条例が設けられたとすれば、地方税法の強行規定に違反し、違法、無効となる。 

本件条例は、特例企業税の課税標準を定めた7条1項の規定の文言を一見した限りでは、欠損金の繰越控除前の所得の金額を課税標準とするように見えるものの、同項括弧書き内の文言及び法人税法57条1項ただし書の規定からすれば、その実質は、繰越控除欠損金額それ自体を課税標準とするものにほかならず、法人事業税の課税標準である所得の金額の計算において欠損金の一部につき繰越控除を排除する効果を有するものというべき。

このような実質を有する特例企業税が設けられた経緯等にも鑑みると、本件条例は、法人事業税の課税標準である所得の金額の計算において欠損金の繰越控除のうち約30%につきその適用を遮断することを意図して制定されたもの。

各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り公平な課税を行うという趣旨、目的から欠損金の繰越控除の必要的な適用を定める地方税法の規定の趣旨、目的に反し、その効果を阻害する内容のものであって、地方税法の強行規定と矛盾抵触するものとして違法、無効。
 
<解説>
所得の金額の計算が人為的に設けられた期間である事業年度を区切りとして行われる
⇒複数の年度を通じてみれば同額の所得が発生している法人であっても、ある事業年度に所得の金額が発生し別の事業年度に欠損金額が発生した法人は、平均的に所得に金額が発生した法人よりも税負担が過重となる場合が生じる。

法人税法が規定する欠損金の繰越控除は、事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化によってその緩和を図り、事業年度ごとの所得の変動の大小にかかわらず法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨、目的から導入された制度。

欠損金の繰り越しが認められる期間については短縮と延長が繰り返されているが、制度自体は昭和15年以降一貫して存置されている。

http://www.simpral.com/hanreijihou2013kouhan.html

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